まちどおしい

2008年12月4日 宝塚
CSの1月放送で、やっと全ツ版の「あかねさす紫の花」と「レ・ビジュー・ブリアン」が放送されますね。
以前からラインナップ一部発表で分かってはおりましたが、番組予告が流れ始めると、改めて待ち遠しくなりました。
やっと、中大兄皇子さまに、お会いできるのですね。
中大兄さまは、かなり芝居が変わっていった役だったので、最後はどこまで行ったのか。私はこの公演の楽は見られなかったので、ずうーーーーーーーーーーっと、待っていたのです。
長かった~。まさか二年以上放送されないとは。

まあ、主役じゃないから、きっと私が見たい部分で映らないところは多いでしょうけどね^^;

それに、ショーの全ツ限定の場面が、チラリと映るのも嬉しいです♪
懐かしいな~。
とても雰囲気のある良い場面で、大好きでした。

それにしても、オオゾラさん関係、本当にCSさんは放送してくれませんよね。
そろそろ一年になりますが「HOLLYWOOD LOVER」は、いつ放送してくれるのでしょうか。
そして、通常は数か月で放送されるディナーショーは、いったいいつになるのか…。


雪組WS『凍てついた明日-ボニー&クライドとの邂逅(かいこう)-』 も、やっと放送されますね。
これも楽しみ。
ちょうど花組公演中だったので、一度だけバウで見れましたが、一度ではもの足りなくて。
なにしろ、ミナコちゃん(愛原 実花)のボニーにかなり泣かされましたから。
私はあまり舞台を見て泣く事はないタイプなので、かなり貴重な事です。
あの胸をぎゅっと掴まれるような痛みは、テレビの映像では感じ得ないものだとは思いますが…。
私は初演を見ていないので、このWSが「凍てついた明日」の、初体験だったのです。雪組さんの若い若いメンバーで紡ぎだす、ひりひりするような若さの痛みが、とても印象的だった舞台。
その中でも、ひと際痛々しい光を放つミナコちゃんに、すっかり心を奪われて帰ってきました。

私はどうも娘役さんに泣かされる事のほうが多くて。
先日も宙組公演をみて、陽月 華ちゃんのキャサリンと美穂 圭子お姉さまのローズマリーの、二人のヒロインに泣かされてきました。
作品の感想については、そのうち書きたいと思いますが…銀ちゃんについてが書き終わってからかな(^^ゞ

ともかく、花組公演も楽しみだし、早く1月にならないかな(^.^)

いろいろ発表

2008年11月21日 宝塚
今日はボージョレー・ヌーボーの解禁日。
…と、仕事帰りに知りまして、ついつい購入して帰りました。
貧乏人なので、円高還元セールの安いヤツ。普通に売っているのはだいたい3,000円程度だったのに、これだけ980円!
ちょっと心配だったけど、フルーティな甘口でなかなか美味しかった♪

それはともかく、色々発表されましたね。
全国ツアー『哀しみのコルドバ』と『Red Hot Sea II』ですか~。
コルドバは、ちゃんと見た事はないんですが、先日CS放送されたの終わりの30分くらいだけ見ました。
…兄妹だけど、今回はヒロインは知らないままだから…えーと…新しいパターン?ちょっとだけ、斬新さを狙ってみた?
「お兄ちゃん」と呼ぶ台詞だけは、観客は聞かされずに済むワケですな。しかし、よくもまあ、これだけ続いて兄妹で(*_*)
でも、今度は悲恋ものの王道パターンの兄妹ですから、今までとは大違いですね。これで成仏して(?)打ち止めにしてもらえるといいなー。
オオゾラさんは、恋敵にあたる役ですかね。私が見た後半では、決闘しようとして中断された処くらいで、あまり印象に残ってない^^;
ともかく、ヤンさんのエリオが素敵だった!…というのだけが印象的で。
途中から見て物語がよく分からなくても、引き込まれて最後まで見てしまいました。真飛さんのエリオも楽しみですね(^.^)

そして、『Red Hot Sea II』の「II」の部分が気になります。
お衣装はともかく(^^;)、構成は無駄の無い勢いのあるショーだった…と思うのは、既に終わったから美化された思い出なのでしょうか。
変更して欲しいのはお魚お衣装であって…いや、まあ壮さんが抜けるのだし、変更は必要なのかな?
しかしこの作品の場合、絶対に変更ができないのは、幽霊船の歌手の三人ですね。セリも盆も必要無いし、その他は割とツアー向きな作品かも。
ともかく。また「ひき潮」の場面を見られるのは、嬉しい事です♪
もうみほちゃんがいないのは寂しいですが、乙女はどなたが踊って下さるのかな~。発表が待ち遠しいです。

そして、壮さんの主演バウは『オグリ! ~小栗判官物語より~』。
私は、近藤ようこ氏のまんが「説経小栗判官 」(ちくま文庫) が大好きなので、すごーく興味があります。
最初にこの本を読んだ時の衝撃は、ちょっと忘れらません。
今の日本人が持っている「常識」とか、西洋的な「理屈」とかをぶっ飛ばした処にある、人間の情に打ちのめされた思いがしました。
「物語」の持つパワーというものを、思い知らされたのです。
理屈では説明できないんですけれども、ともかくすごい、と思ったんですね。
主人公の小栗は我儘ですごく嫌なヤツで、常識的には納得できないお話ですが、それが日本人の「情」で納得できてしまうんですよね。
壮さんだったら、小栗の豪快な力強さを、骨太な演技で見せてくれそう。あの理屈を超えた魅力を素敵に見せてくれそうで、ワクワクします。
ヒロインの照手姫は、芯の強い魅力的な女性です。まんが版では、中盤以降の主役でもあります。
誰がヒロインなんだろう?すごく楽しみです。
歌舞伎などのお話は知らないのですが、この二人以外には、あまり大きな役が無い気がしますが、どうなるのかな?
…しかし、とっても心配なのが、演出家の変な主義主張が入るんじゃないかということですね~。
どうか、どうか、良い作品になる事を祈っております。

月組は、「エリザベート」。
満を持しての、瀬奈じゅんトート!
さぞや格好良い、素敵なトート閣下となられる事でしょうね(^^)
私はアサコさんのエリザベートは大好きでしたし、本当に良い演技だったと思っておりますが。でも「男役・瀬奈じゅん」のファンの方には、その後トート閣下役も演じられるのは、嬉しい事かと思います。
また雪組版でトートの位置付けを変えた小池先生が、今度はどのような新解釈で演出されるのかも楽しみなところです。
その他のキャストについては、主演娘役のいない現在の月組で、どのような形で上演される事になるのか予想しにくいところですが。
中堅どころについては、重臣と親戚のおじさまや客の貴族…あたりになるのかな?前のエリザとあんまり変わらない感じがするのは、ちょっとツライ。
でも、新公は、みりおトート?…見たい!
エリザは、しずくちゃん?らんちゃん?りおんちゃん?
いや、りおんちゃんは、ゾフィーでしっかり歌ってくれるのかな?
…ともかく、新人公演メンバーはすごく楽しみです(^^)

時の流れに

2008年11月17日 宝塚
雪組東京公演『ソロモンの指輪』『マリポーサの花』、千秋楽おめでとうございます。
私は二回見たのですが、お芝居もショーも、ぎっちりと見どころ満載の公演で。
なんだか、全然ちゃんと見る事ができませんでした。
特にショーは、ひろみちゃんを見てしまうとさっぱり全体が見られない…と、作品についてまったく分からない^^;
とても感想がまとまりきれず、何かを書く事はできそうにありません。
たど、とても美しい公演だったと思います。色々な意味で。
良い公演でしたね。夢のような3時間を過ごさせていただきました。


昔、雑誌で篠山紀信さんが音楽学校の生徒さんを撮影する、という企画がありまして。
本科だった85期の皆さん一人ずつの写真の写真がありました。
その中で一番「顔が好きだ」と思って覚えていた、柊巴さんも今日で御卒業ですね。山科愛ちゃんも…。
「ノバ・ボサ・ノバ」で、月組でもエイティーファイブロケットをやってくれた85期には、思い入れがあるので、寂しいです。
皆さまのお幸せを祈っております。

その雑誌で、紀信さん撮影の「宝塚音楽学校の看板を持つ少女」の写真がとても印象的で。
初舞台の時からずっと、あの少女・理世ちゃんを気にかけておりました。
その望月理世ちゃんも、「大王四神記」にて退団との事。
花組さんは各公演1度見る程度でしたが、結構下級生の頃から目立つ使われ方をしていたので、だいたい一度は見付けていたと思います。
花組さんの舞台でちゃんと見分けられる、数少ない生徒さんでした。
アラビアの時には、すごく綺麗になったなーと思っていたのですが…寂しいです。
最後の公演、どうぞ思いっきり楽しんで下さいね。

それにしても、あれから10年なんですね^^;
早いなー。
まさか、あの雑誌を見た時には、10年後に花組で大空さんが銀ちゃんを、みつる君がヤスをやるなんて…想像もできませんでしたねー。
そしてこの85期の二人、みつる君とひろみちゃんに、私がこんなにもメロメロになろうとは。
みつる君に関しては、一年前にはまるっきり想像できない事でしたしね。
CSなどを見て、なんとなく以前から良いイメージを持っていたような気がしますが。「Red Hot Sea」で、一気に好きになってしまったのです。
特に好きだったのが「幽霊船」の場面。
それまで熱いイメージだったみつる君が、ふっと肩の力を抜いて、粋でクールに踊っているのが素敵でした。
笑っていても、どこか寂しげな目をしていて。
私は寂しい目をした人に、弱いのです。オオゾラさんとかね(^^)
だから、みつる君がヤスに決まった時は、すごーく嬉しくて。
ヤスのお芝居も、すごく良かったので、幸せでした。


そういえば、花組「大王四神記」の配役が発表されましたが…ドラマを見てないので、配役を見てもなんだかよくわかりません^^;
わかるのは、壮一帆さんの「大長老」が、悪役だということ。
ドラマ版のダブルヒロインとなるスジニ役が、愛音さんという事。
順番どおりではありますが、なかなか興味深い配役です。

交じりっけの無い悪役というのは、役者さんにとっても、見る者にとっても、とても面白いものだと思います。
何をしてもいい、やりたい放題ですから、きっと遣り甲斐があるものだろうなーと思うんです。
意外にオオゾラさんは、やってないんですよね。月組三番手になった時、すごく期待してたんですが、ずっと主役のお友達役でしたし。
強いていえばペペルですが…もっともっと悪い人も見てみたい。いや、それはともかく。
壮さんの「大長老」、どうやら影の黒幕、一番悪い人のようですね。すごく楽しみです(^.^)

そして、みわっちさんの女役は本当に素敵ですものね。
情があって、懐の深い、女の温かみがあって。もちろん、すごく美しくて。
オスカル様が非常に良かったのですが、脚本的に物足りない使われ方だったので、今度は…と期待してしまいます。
一本ものなのに、男役姿が見られないのは非常に勿体無い事だとは思いますが、そこまでするからには、ぜひとも素敵な役でお願いします。
ほかの役は、よくわからないのですが、皆さんに遣り甲斐のある役が与えられるように祈っております。
花組の皆さんが作る、華麗な世界。お正月を楽しみに待っております。
花組の皆様、千秋楽おめでとうございます。
ご無事に大劇場公演を終えられて、何よりでございます。
さお太さんの状況が分からないのは心配ですが、ともかく一区切り。真飛さんのお披露目公演、終えられてホッとしてらっしゃるのではないでしょうか。
フィナーレ、オオゾラさんのまわりを取り囲む皆さん。一人一人が祐飛さんと目を合わせて笑い合うのが大好きでした。さおりさんの休演後は、その場所には誰も入らなくて、毎回さおりさんの番の時に思わずその場所を見てしまって寂しい思いをしておりました。
東宝でも休演は胸が痛いですが…早くお元気になられますようお祈りしています。

遠くで、花組さんの事を思いつつ。
今日はついつい、「カサノヴァ・夢のかたみ」を全部見てしまった。
面白かったです。やはりこの時代の小池作品は、ともかく面白いんだなー。
大勢の生徒に役をあたえ、大人数をダイナミックに動かしつつ、ちゃんとスターさんの見せ場もあり…。
知らなかったのですが「薔薇の封印」って、この作品をまんまパクったものだったんだ。
「時の河」の音楽は、この作品から転用されたものだったんだ。いや、何か原曲があるのでしょうけど。
「ファントム」のマダム・カルロッタの曲がそのまま使われているのも面白いなー。
そしてやっぱり、悪役は世界征服を目指す!!
決まりだよね。

…過去の作品を見せるのって、作家先生方には、都合が悪いのでは?
「ノバ・ボサ・ノバ」の再演で、草野作品が繰り返し使うモチーフは鴨川先生のパクリだとバレたみたいに^^;
まあ、それでも。出演者にあった作品として、ちゃんとテンポ良く楽しく見られるように上手く継ぎはぎしてくれるなら、別にいいんですけどね。
今回の『Red Hot Sea』は、なかなか成功した例だと思います。
でも、草野先生には、ヴィジュアルコーディネーターをつけてあげたほうがいいとは、思いますが。

黎明の風

2008年4月29日 宝塚
先日…随分前ですが『黎明の風』『Passion 愛の旅』見てきました。
噂を聞いてすごーく期待して見に行きましたが、期待以上♪
本当にカッコよくて、素敵でした。
汝鳥 伶さんと、 美郷 真也さんが(^^)
なんて、素敵なオジサマ達!

しかも最後に、この二人のオジサマがたが、良い所を全て持っていくじゃないですか。
見終わった後に印象に残っているのは、このお二人でしたよ。
吉田のオジ様の、全てを終えた後の安堵の芝居の見せ場。
何よりも、 アメリカに旅立つ前の近藤さんに対する皆からの言葉は、退団する美郷さんへの賛辞と重なって泣けますよね。
うんうん、と頷きながら見ました。今までこつこつと努力して、頑張ってくれたんだ。
本当に、おつかれさまでした。
あったかくて優しくて、人間味のある役者さん。かすかに哀愁を滲ませた、おかしみのある芝居が本当に大好きでした。
良い芝居をたくさん見せて下さって、ありがとうございました。

作品全体としては、「ダイジェスト・白洲次郎」というイメージ。
この白洲さんというのがどういう人なのか勉強していかなかった私には、わかったような、わからんような…。
でもよく知ってから見たら、表面をなぞっただけだと思うような気がしましたが、どうなんだろう?

見てから時間がたってしまい結構忘れているのですが、私には男役さんたちの芝居が、ずーーーーっと怒鳴ったり叫んだりばかりに思えました。すっかり疲れてしまった印象があります。
熱くなるのは分かりますが、もう少し引いて見せながら、グっとくる演出って出来なかったものでしょうか。
怒鳴るばかりが、強調では無いと思うのですが…。
石田先生にそれを期待するのは、無理というもの?
みんながずーっと叫ぶ芝居ばかりなのは、むしろ一本調子に思えたのだけど。
…と、そこで、吉田のオジ様ですよ。
熱い叫び声が渦巻くなか、すっと心を落ち着かせてくれるオジ様。素敵でしたわ。

それに娘役さん達の場面でも、ほっとしました(^^)
ヒロイン、 正子役の和音 美桜さんは堂々とした演技で、気の強そうで芯の強い、しっかり者の奥様を好演。
轟さん雪組時代の、ぐんちゃんとのコンビを思い出すような、自然な似合いのご夫婦でした。
ジーンの 美羽 あさひさんも、情のある芝居で良かったなぁ。前回のシルビアより、ずっと良かったと思いました。
ポーラのアリスちゃんはキュートで生き生きして、いかにも人生を楽しむアメリカ娘がよく似合っていました。
吉田和子役の 藤咲 えりちゃん、私は初めてちゃんと見たのですが、清楚な存在感が若手娘役らしくて好印象。若い娘役にあてるのはありきたりな役だけど、最近はあまり見なかった感じで逆に新鮮…と、思ったら。
たっちんがやる筈だったのですね。という事は、本来もっとしっかりしたイメージの役だったのかな?そういえばファーストレディと言われるのが不思議だったんですが。でも可愛かったので、これはこれで良し、ですね♪

ショーは酒井先生だなぁ…というのが、まず第一印象。
神秘性のあるファンタジックなイマジネーションと、哀調を帯びたメロディが魅力の酒井ショー。きっちりと生徒の魅力を活かす、老練な…というような手堅い演出で、最近はハズレ無しという印象です。
今回は幕開きから月組の「レ・ビジュー・ブリアン」思い出させ、懐かしかったです。まるで対になった作品のように思えました。
同じく轟さんの特出だったせいかな。轟さんの扱い方が同じような感じで。

そして、お芝居では感じなかったウメちゃんの不在を強く感じました。
決して代役の方がどうというのではなく。
代役の皆さんも、まわりの皆さんも頑張ってフォローされていて、見ている間は楽しかったのです。
でも終わってみれば…。
あれは、あくまでもウメちゃんのイメージで、ウメちゃんに宛てて書かれたものなんだなぁ…としみじみ思ってしまって。
やっぱり稀有な存在の娘役さんなんですね。
ゆっくり休んで、しっかりお怪我を治して下さいね。完全復活の日を待っています。

宙組さんの男役さん達は皆さん綺麗でキラキラですね。
残念だったのは、せっかく深いスリットの入ったドレスのタニちゃんが、後ろ向きで踊ってばかりだった事かな。
せっかくの美しい足なんだからさー、足出すならもっとちゃーんと見せて欲しかったのにーー(T_T)

「赤と黒」その2

2008年4月15日 宝塚
かなり時間がたってしまったのですが、青年館の「赤と黒」について、続きです。

久しぶりに、純粋な宝塚の古典作品を堪能したなーと、思いました。もう、こんなバリバリの古典作品を宝塚で見る事はできないだろう…と。
古典文学としても、宝塚の古典劇としても。
それほどの潔さで、トウコさんが頑張ってくれたように感じました。

最近CS放送で過去の作品の映像を見ていて、初めて気付いたのですが。
80年代くらいまでの宝塚では、洋物の作品でも、ドレスを着るような年代の作品は「時代物」扱いの“大芝居”で演じられていたんですね。
私が宝塚ファンになった頃には既に“大芝居”は、日本物と「ベルサイユのばら」「風と共に去りぬ」のような植田作品にしか残っていないものでした。おそらくは、小池氏・石田氏・正塚氏あたりの世代の演出家陣の先生方が、変革していったのだと思いますが。
ただ、その当時のメインキャストの生徒さん達は、一応“大芝居”の経験はあり、その技術は持っていたのですが。
でも、最近の生徒さん達はもう、あの“大きな台詞”が喋れないんだな、と思う事が最近度々ありまして。

作品の影響もあり、花・月は割りと早くに“大芝居”から脱却したイメージがあります。
そして、なんとなくですが、“大芝居”をできる境目は、花組月組、そして宙組さんは77期くらいなのではないかと思うのです。
月組でいえば、多分本公演では天海さん時代の「風と共に去りぬ」が最後かな?と思いますし。新公含め、あの大きい台詞で、大劇場で会話した経験がある期、という事で。勿論、「なんでもできる霧矢さん」のように、例外の方はいらっしゃいますが。
雪組・星組さんは、日本物や「ベルばら」が何度かあるので、もう少し下の期の生徒さんまで大丈夫そう。それでもある程度以下の学年の生徒さんは、取って付けたような台詞になってしまう気がします。
なんというか、ネイティブな言葉ではないんですね^^;
でも、“大芝居の型”というものは、強調したい部分を極限まで大きく見せる為に、長い時間をかけて作られたもの。
キチンとできれば、効果は大きいものなんだなーと、今回改めて思いました。

あの大きな台詞をキチンとこなして、“大芝居”の中に「真実のハート」を込めて芝居ができる生徒さんは、もう残り少ない。
その残っている生徒さんの中でも、最高クラスの技術とハートを持ったトウコさんの主演で、この作品を見る事ができた本当に良かった。
柴田先生の古典文学作品を、宝塚の舞台でこの水準で見る事は、この先はもう無いかもしれない。
先日の宙組さんの「バレンシアの熱い花」では、基本は現代の台詞回しの中に、部分的な見せ場だけ大芝居を混ぜたようになっていたと思います。
もとは、見得を切るような大芝居として書かれた脚本を、きちんと再構成する訳でもなく、安易に普通の会話のように流しているのがとても居心地が悪かった。そして、主演のタニちゃんを含め、ほとんどの生徒さんは大きな台詞はネイティブではなかった^^;
知らない地方の方言か外国語を無理矢理喋っているように不自然な気がしました。
今後また柴田作品の再演をするならば、あの不自然な形になる可能性が高い気がするので。
とうこさんがキっと見得を切ったのが、ばしっと決まった!うわー、カッコいい!…というようなものは、もう見れないかもなーと思ったのでした。見得じゃなくて、キメ台詞・キメ目線のようになる気がしたんですよね、イマドキの生徒さん達は。
私は演劇の知識などは無いので、あくまでCSで過去作品を見ての感想です。間違いがあっても分からないので、すみませんm(__)m

また、柴田作品を見たな〜という感慨が大きかったのは、この作品がいかにも柴田先生にありがちな要素を全部持っていたから。
まずは、「貴族」と「平民」のお話である事。
私が見たほとんどの柴田作品は、「貴族の虚しさ」を描く為に平民の「いきいきとした生活」を描いていました。その反面、虐げられた平民の苦しさと怒りを描く為に、貴族の傲慢と冷酷さを、常に並べて見せていた。
私は「赤と黒」の原作を読んでいないので、どの程度柴田先生のアレンジが入っているのかわからないのですが。
この作品はまさに、貴族の傲慢の為に消えていく、純粋な平民の青年の悲しさを描いた作品で。「わー、柴田作品だ!」と、思いました。

そして、もう一つ。
柴田先生は、常に「女性」を描く作家なんだなーと。
女性の愚かさや、心の奥にとどめる事の出来ない情欲のようなもの抱いた、清らかなだけでは無い女性達。
対するのは決してヒーローではない、様々な葛藤と弱さを抱えた男達。
華やかな舞台、ドラマチックな物語の中の、生々しい心を抱えた男と女。
女性達をしっかりと魅力的に描く事で、虚構の世界の「宝塚」の舞台で、リアルに「心」を表現する作家なんだ、と。改めて柴田作品の力を思い知ったのでした。

というのも、やはり今回の二人のヒロインがそれぞれに魅力的であったからです。
…という話は、また^^;

「赤と黒」

2008年4月8日 宝塚
「赤と黒」見てきました。
またもや、改めて名高い名作である事を自の目で確認できて満足でした。
「ジュリアン・ソレル」を演じてみたい役という生徒さんが多かった伝説の作品。興味津々で見たのですが。
確かに、これはやりがいがありそうだなー。納得です。
あの上演時間の中に、ありとあらゆる感情が詰め込まれていて、役者人生を余すところなく生きられる…という感じなのかな。
そのぶん、本当に大変な役だとは思いますが、とうこさんは、さすが!でした。
役者としての経験とエネルギーを、全てぶつけるような渾身の演技。素晴らしかったです。

柴田先生の名作脚本とはいえ、演出は中村暁氏。
どんな作品でも、だらだらと平板で盛り上がりの無い、退屈な作品に仕上げるという恐ろしーい才能を持った、恐怖の演出家です。
一幕は、その才能をいかんなく発揮して下さって、かなり困っていたのですが。
二幕では、とうこさんが彼の才能を力ずくでねじ伏せましたね。
いや、すごいと思いました。
あの、中村暁氏の退屈演出を凌駕する人は…覚えがない。だからこそ、私は彼を「天才・退屈演出家」と呼んでいるわけで。
少なくとも、私がナマで見た舞台では初めてです。
とうこさんの底力を見せられた思いでした。
最近は今ひとつ、とうこさんの良さを活かした作品にあたってないように思っていたのですが、この作品を見る事ができて、良かったと思いました。

あすかちゃんのレナール夫人も良かったですね。
この役が魅力的でないとお話が成り立たない、というところをきっちり演じてくれました。
辛抱役ですが、終始抑えた演技で素敵でした。
やはり娘役トップさんで、こういう役ができる人がいて欲しいと改めて思いました。この経験の積み重ねは、本当に素晴らしい。
身のこなしが本当に美しい人だなーと、改めて思いました。

そして、ねねちゃんのマチルドは可愛かった!
本当に可愛かった…うっとり。
生粋の月娘として、のびのび育ったねねちゃんですから、組替は少し心配もしていたのですが。
とうこさんが、ほんとうにがっしりと受け止めて下さって…本当に有難いです。
ねねちゃんのハートのある芝居を大切にしつつ、星組さんの色に染まり、あすかちゃんの下で宝塚娘役の様式美をきっちり学んでくれるといいな♪

そして、私は最近、星組さんを見るたびに涼さんのダンスに心奪われております。
とてもストイックで、端正な踊る姿に。
無駄な動きなど一つもなく、決して動きすぎず、絶対に形を崩す事などない。
静かな、でも、ピリッとした緊張感に満ちた美しさ。
すごいなー、素敵だなぁ。かっこいいなー。
これこそが、宝塚男役の美だよな…と感動してしまうのです。

…時間切れなので、今日はこれまで。
やっと、ポケットカレンダー買ってきました。
今回買ったのは、大空さん、未涼さん、彩那さん。悠未さんも買おうと思ったけれど、品切れでした。残念。
私の好きな、暖かく繊細なお芝居を見せて下さる、お気に入りさん達。
本当に優しい芝居を見せる役者さんは、さみしい目をしている…というのが私の持論です。

それにしても、大空さんとまっつが同じ組になるとは、驚きです。
この二人が同じ舞台に立つ姿を見られるのはとっても楽しみだけど、ひろみちゃんの月組時代のように、大空さんと反対位置に立たれると大変という事も予想できます。
できるだけ、近くに立っていただけると嬉しいです(^^)

シャンテのキャトルレーヴの舞台写真コーナーでは、大空さんは相変わらず、花組さんにも当然月組にも入れて貰えず。過去の写真の再販コーナーのついでのように単独コーナー。しみじみ寂しくなったりしてたら。
ふと、目を上げると、そのコーナーの上の方に特集ディスプレイが作ってありました。
「君を愛してる−Je t’aime−」とバレンタインデーにかけて、「ラブラブ写真コーナー」らしいです。前からディスプレイしてあったのでしょうけれど、今日、気付きました。
トップコンビのツーショット写真の特集らしく、ラブラブな写真がディスプレイしてあります。
…でも、どうして。そのディスプレイの中に「パリの空よりも高く」のアルマンドとジョルジュの、ツーショット写真が混じってるんでしょうか?
キャトル的には、あれはラブラブなんだ^^;
でも、水トートのルドルフへの最後のキスの写真は。
…色々な意味で、怖いんですが(・_・;)
今年も、ポケットカレンダー発売なんですね。
もはや季節の風物詩。
年度末の纏まった売り上げ作ろう企画…などと思うのは、心の美しくない大人だからかな(^^ゞ
当然ですが、大空さんは花組の一覧に並んでます。
今まで、キャトル・レーヴなどでの並びは見てたんですけど、新発売の商品がこのように並ぶのは初めて。
「お…」と思いました。これから、こういう並びの舞台を見る事になるのですね。
ドキドキします^^;

そして、CSで「HOLLYWOOD LOVER」のDVDのCMを初めて見ました。
うわー、懐かしいわ。
そして、このDVDも3月20日発売…年度末にちょっと売り上げ作ろう企画だ(笑)
すいません。以前、年度末の売り上げを積み上げろ、と言われる部署にいたので、ついついそういう発想に^^;
星組公演見てきました。
今年、初の東宝宝塚劇場。楽しかった〜。やっぱり宝塚はいいなぁ。…たとえ、作品が齋藤趣味爆裂作品でも^^;
男役さん達がかっこよくて、娘役さん達がキレイで、それだけで幸せだ。舞台の皆さんのパワーと笑顔に、幸せを貰いました。
感想は纏まらないので、ひとまず箇条書きメモ。

・トウコさんは、齋藤君に愛され過ぎて、ちょっと気の毒だと思った。
・あすかちゃんが可愛い♪
・ゆかりちゃんの笑顔が、光にとけてしまいそうだ。
・コトコトが、すんげー可愛い♪
・しかし、噂のコトコトのモノローグは、確かにスゴイ。笑いで手が震えるので、オペラグラスを持ち続ける事が不可能に。
・私的に伝説の「サラン・愛」のくららちゃんのモノローグ「まあ!素敵なお方!」とか、なんだっけ?檀ちゃんのお墓が、突然半分に割れる場面とかと同じくらいの破壊力だった。
・柚希さんは芝居でもショーでも舞台荒らしだと思った。しかも必ず舞台荒らしその2.和くんがついてくる。荒らし能力は和くんのほうがかなり上かと。しかし破壊力は柚希さんのほうが数段上だ。
・今日は一階後方席。音響が非常に悪く、この二人の会話は声が大きくて耳が痛かったので、そう思ったのかもしれない。
・でも宝塚において「舞台荒らし」というのは褒め言葉でもあると思って書いています。
・しずくちゃんが、めちゃくちゃ可愛い(^^)…いつの間に、こんなに美しくなったんだろう。月に来てくれるのが楽しみだなぁ♪
・しいちゃんは、いつ見ても変わらない笑顔が素敵だ。なんだか、そのあらゆる意味での変わらなさが、月組におけるかえこちゃんのようだ。さすがに、お顔は少し大人になったけど^^;…そこに浮かぶ表情が、最初に見た時と変わらない気がする。
・すずみん、ショーの女役がとっても可愛い。びっくり。
・すずみんの燕尾のタンゴは、ストイックな感じがあって、素敵。
・みなみちゃん、芝居もショーも、本当に本当に可愛い。エトワールは、まろやかな声の部分が素敵。最後にピンクの羽で良かった。

芝居は、これでもかこれでもかと、ギュウギュウに詰め込んだ作品。聞いてはいたけど、やっぱり、ちょっと疲れた。
ショーも、色々なものをごちゃ混ぜにした…作品としてはアンバランスな感じ。
しかし!
極楽鳥達が!!
ゆかりちゃんが、みなみちゃんが、しかもあすかちゃんまで、脚を見せてくれちゃって!!!他の皆さんも…何処を見たらいいのか困るじゃないですか。
かっこよく踊る男役さん達を見る余裕もまるで無い程、大喜びしてきました(^^ゞ
あの極楽鳥さん達を見る為に、もう一回くらい行きたいなーと、結構真剣に考えた。

そして。
開演前、エスカレーターに乗る前にキャトルをふと見たら、「HOLLYWOOD LOVER」の舞台写真が出ているのが、見えまして。
あわてて、キャトルに走って…でもあまりにも沢山あって、買っている時間はありません。
ともかくどんな写真があるのか、見るだけで、客席へ。
幕間にまた走って、大急ぎで買ってきました。
またもや、めろめろ。
良い写真が沢山あります。
最初は「ここはもうちょっと…」と思った写真もありましたが、眺めているうちに全部良く思えてきました。
見ていると、また泣きたくなったりして。
今日から、お稽古開始だったんですね。あと、もう少し…。

悩み

2008年1月7日 宝塚 コメント (2)
まだ先の事ですが。

大空さんが月組の人でなくなったら。
このブログの「テーマ」というカテゴリ分類を変更しなければなりません。今まで「大空祐飛」という分類は、作ってなかったので。
私にとって大空さんについて書くものと、月組について書くものと、区別する…という発想がなくて、全部「月組」で区分してあったのです。

今まで書いたものを、今更区分するのも…なんだか変な気がするのですが、1月26日以降には、やはり「大空祐飛」というテーマに分類せざるを得ない気がします。
そして、月組以外はすべて「宝塚」で分類していたのですが、「花組」というテーマを設定しないワケにもいきません。

月組以外の舞台はだいたい1公演一回見れば良いほうですし、感想をうまく纏められなかったりしたので今まで、舞台を見ても感想をアップしてないもののほうが多いのですが。書きかけで纏まらなくて放置されているものが幾つかあって。多分、もう書けないしなぁ。うーん。

…などと思いながら、過去の日記の分類を見てみたら、設定するのを忘れてたものが、沢山^^;
今は、何も考えられません。
私は月組のファンになってから、祐飛さんのファンになりました。祐飛ファンである前に、月組ファンなのだと思ってきました。
青年館の終わる頃には、決定的にファンになった「WEST SIDE STORY」のチノからちょうど10年だなーと、なんとなく思ってました。

ただ、分かっている事は月組・大空祐飛、最後のセリフが「チャオ!」であること。
最後にただ一人、遠くに歩み去っていく事だけ。

ステファーノさんは、穏やかに笑っていた。
辛いことも飲み込んで、全てを包み込む大きな優しさで微笑んでいた。しなやかで、穏やかで、芯の強い。…美しい笑顔だった。

私がバウを見た時には、おそらくご本人はこの組替えを知っていた事と思われます。
それでも、あんなふうに微笑んでいた。ステファーノさんと祐飛さんの心が重なって見えた。
だから、大丈夫なんだろうと思う。
私も安心して祐飛さんを信じて、あの人についていっていいのだと思う。
寂しいけれど、予測のつかない未来に不安が大きいけれど。

今まで月組のみんなを愛してきたように、花組の皆さんを愛して。月組の卒業生が作り上げて残してきた歴史を敬愛してきたように、花組さんの輝かしい歴史を敬愛して。そんなふうに、なっていけると思う。
おそらく、きっと、良い舞台を作り上げて下さる事でしょう。それは間違いの無い事だと思います。
花組ファンの皆様、どうぞよろしくお願いします。

今は、何も考えられないけれど。…きっと、いつか。
CS放送「バレンシアの熱い花」月組版…宙組公演を観劇してから見ようと思って録画していたのに。
冒頭をうっかり見てしまったら、ついつい引き込まれて…最後まで見てしまいました。
いやー、さすがに全盛期の柴田作品は良いですね。
ともかく、役者に芝居をさせてくれる脚本です。舞台にちょっと出てくる、ほんの小さい役の短い芝居でも、見せ場がありますね。脇の役者さんがやる場合も若手がやる場合もあるでしょうが、その人なりの工夫をして、人生を表現できる。そして、様々な人物の思いが絡まって物語を進めていく。これが、芝居ってもんだな、と思って見てしまいました。

そして、柴田先生は女役さんを使うのが、本当に上手いですね。
この公演では、ヒロインのイサベラは本当にカッコ良くて”娘役”さんなんて呼ぶのは申し訳ないような。柴田作品にあたると女役さんは退団を決意する…と言われていましたが、納得です。
この「バレンシアの熱い花」は、男役さんが素敵な役だという事で有名…と聞いたのですが、女役さんも素晴らしい役ばかりですね。
イサベラ・シルビア・マルガリータ、そしてセレスティーナ…どの役も、美しく、カッコ良い。
何よりも、どの役も、誇り高い女達である事が印象的でした。この物語は女達の誇りが、動かしていくのではないかと思ってしまったのです。

まずは、物語の始まり。ルカノールの前に現れたセレスティーナが、領主に対して苦言を呈する場面。
前領主の妻としての誇り高さが、圧倒的。良い領主であった夫に誇りを持ち、その夫を支えた事もまた彼女の誇りの源なのかな。その責任感もあるのでしょう、真っ直ぐに権力者に向かっていく姿は、力強くて素晴らしい。

そして、ヒロインのイサベラ。小松美保さん。
主人公のフェルナンドの住む貴族社会の誇りを、母・セレスティーナ達がきっちり見せた後で、下町で生活する”庶民”として登場します。
しかし、彼女には平民の女なりの誇りがあり、真っ直ぐに気高く生きている。その鮮やかな美しい女がフェルナンドに心を動かし、彼が秘かに抱いていた孤独にただ一人気づいて、受け止める。その時、彼はは何も偽る事ができなくなってしまう。彼女に惹かれている事も、婚約者を裏切れない事も。
フェルナンドに恋をした彼女は、そんな彼の告白を受け入れて、貴族の若様ではなく何者でもない、「もう一つの顔」の男を愛する…。
全てが終わった時、彼女はフェルナンドに別れを告げます。
身分が違いの恋だから、当然…なのでしょうね。貴族の若様と平民の娘が無理に寄り添おうとしても、世間のそしりを受ける事でしょう。でも、彼女はただ、違う世界に生まれただけ。平民の女なりに真っ当に生きてきたのです。何も貴族などに馬鹿にされるいわれは無いのですから。
愛人というのは可能だったと思うのですが、誇り高い彼女はそれを自分に許す事はできない。神に背く事も「お嬢さん」を悲しませる事もできないし、フェルナンドにはクーデター後の国をまとめていく責任があります邪魔はできません。
終わりがあると分かっていても、彼女は惜しみなく、自分の心を彼と分け合った。そして別れの時。相手を失う痛みは、やはり大きい。それでも、真っ直ぐに頭を上げて別れを告げに来るイサベラの潔さは、本当に切なくかっこいいですね。

そして、もう一人のヒロイン、シルビア。舞小雪さん。
ルカノール公爵に陥れられ、彼に身を売った、貴族の美しい姫君…だった人。それは、女性にとって誇りを踏みにじられるような事で。彼女はもう”姫”ではなく、人妻の憂いと色香を漂わせる哀しい女性となった。イサベラとは対照的な存在ですね。
更にかつて恋人であったロドリーゴが、同じ屋敷に住み、常に無言で責められている状態に。大地真央さんのロドリーゴは、若く清潔な美しさにキラめいていて、いたたまれない日々だと思います。初演の瀬戸内美八さんの映像は見た事が無いのですが、清潔感と色気のある方、ですよね。
全てが終わった時、彼女は死を選ぶ。
確かに、あの清潔な若者に愛されるワケにはいかないだろう、と思います。かつて幸せな恋人だった時代があるだけに、変わり果てた自分を彼女は受け入れる事ができない。世の中を知らず穢れを知らない乙女としてロドリーゴに恋していた時の誇りが、許さない。ルカノールに踏みにじられた誇りを取り戻す為、彼女は海に身を投げたのだと、思いました。思いつめた顔で、決然と一人歩いていく姿は、哀しく、美しいですね。

最後に、何も知らない、知らされない少女マルガリータ。
彼女もまた、少女の小さな誇りを守り、泣き言も恨み事も言わず、黙って耐えています。何かがあると察しながらも、フェルナンドに無理に問い詰めたりはしません。その姿は、いずれはセレスティーナ夫人のような、立派な「貴族の奥方」になる事を予感させます。だからこそ、フェルナンドは決して彼女を裏切る事はできない。彼女と結婚して、クーデターの首謀者であるレオン将軍の後ろ盾を得る事。そしていずれは父の跡を継いで新しい領主となり、この土地を平和に豊かに治める事が、彼の背負った責任なのですから。
また、ラモンの妹ローラも、暴力に怯える事なく抵抗して、命を落とします。どの女達も皆誇り高く、強さと激しさを、たおやかさの裏に隠しています。(月娘達が、強く誇り高いのは、この時代からの伝統なのかしら?…と、思ったり^^;)

冒頭、ルカノール公爵の屋敷と、フェルナンドとレオン将軍の会話でざっと状況を説明したあとは、様々な人物たちのドラマが畳み掛けるように展開するこの作品。フェルナンドとロドリーゴ、それぞれのドラマを並べ対比させる事で、舞台の世界観を観客に納得させ、お互いのドラマを強調しあい、そこにロドリーゴが加わる事で更に新しいドラマが展開して…と、本当によくできた脚本ですよね。
どこにも無駄がなく、全てが有機的に作用して。ぱっと見た限りでは自然見えますが、もの凄く凝った作品だと思います。
「あかねさす紫の花」も同じ手法を使っていますが、時間の転移があるので、ちょっと難しい。が、多分この「バレンシアの熱い花」のほうが、作るのは大変なんじゃないかな?
なんと言ってもキャラクターがすごく多いですからね。その分、一人ひとりの人物の持ち時間は少ないワケです。脚本は、吟味した無駄のないセリフで心情を伝え、役者はセリフでは何の説明も無い部分を明確に演じなけらばならない。
…でも、その説明の少なさが、この芝居の良い所なんですよね。私は、宝塚に限らず、登場人物が心情を全て、セリフで”説明”してしまう、イマドキの風潮が嫌いなので「これこそがドラマの醍醐味よ!!」と思います。
特にフェルナンドとイサベラの、複雑な心の通い合いは、ほとんどが歌と踊り、表情、しぐさで表現されます。そして、最後の「私のイサベラも死んでしまった」というセリフで。
…二人は互いの心を分け合った。別れは、自分の心の中の、相手と分かちあった想いを失う事。別れても、もう、出会う前の自分には戻れない。心の一部が死んでしまい、相手もまた心の一部を喪った。…その傷を絆として、二人は別の人生を歩き始める。その刹那の時間の深い心の交わりが、人生を変える重みとして、しっかり伝わってきます。
やっぱりすごいよなー、柴田先生。ロマンチックな恋愛至上主義でありながら、人間の心の真実のような部分に触れてくる感じ。イマドキの、主役がずっと舞台に出ずっぱりで、えんえんと心情を説明しながらも、まるっきり心が伝わってこない演出家さん達は何やってんだろーと思いますよね。役もずいぶん少ないのに。
最近の月組作品でいえば、某キムシンの「なんちゃらのローマ」とかね。主人公が敵を倒す話…と、大きく括れば同じようなものですが、感動の度合いがかなり違うと思う^^;

その後、宙組公演を見ましたが、演出家・中村なんちゃら…さすがですね。ドラマを単調な一本調子に流す天才!
この、ドラマチックな場面の連続の、美味しいとこ取りだけで作られた作品を、よくもあれだけ…すげーや(-_-;)
先日書き忘れたことを思い出したので、追記。

二幕のロックメドレーのどこかで、どなたかが歌っているバックかな?
4組のカップルが踊っていた。まず、目に入ったのが、まっつとれみちゃん。…なんて、幸薄そうな二人なんだ!
ものすごく似合い過ぎてびっくり。あまりに似すぎていて、惹かれあった挙句、実は血の繋がった兄妹でした…とかいう、最近どっかで見た話が似合いそう。
と、思っていたら、その後ろにいるのはねねちゃんだ!…組んで踊っているのは、ミツル君?なんでまた、そんな組み合わせに。ねねちゃんのほうが大きいし、肩幅もあるだろうに^^;二人とも可愛いけど…サイズ以外は、似合ってるけど…うーん。
その二組のカップルに見とれていたら、暗転する直前に、反対側にひろみちゃんがいた…ひろみちゃんも見たかったのに(泣)そして、もう一組は不明。

ディスコキングな祐飛さんが歌う後ろで、ひろみちゃんが踊ってた!
ものすごく懐かしい気分。ひろみちゃんが雪に行ってしまう前、どうやって祐飛さんとひろみちゃんを同時に視界に入れるか、いつも頑張っていたのが懐かしい。
でも、今の雪組さんを見てると、不思議な気分なんですよね。水・となみ・ひろみ…という、月組出身の三人が並んでいて。
それぞれ、違う時代に月組で活躍した三人。そして、それぞれ違う時期に月組を出ていったのに。
宝塚の時の流れって、不思議だなぁ。
水しぇんは私が宝塚を見始めた頃に、最初に頑張って探した下級生…だったんです。プログラムの写真がすごく綺麗でねー。まだお化粧に慣れない変な顔の下級生の中で、一人だけ綺麗だったんですよ。こんな綺麗な人なら舞台で探してみなきゃ!と思った人です。舞台化粧と普段の顔のギャップに驚かされた、最初の人でもありました^^;
となみちゃんは「からさわぎ」のピエロちゃんからのお気に入りで、当時はショーでもお芝居でもなんでもいいから祐飛さんの相手役が見たい!と願っていました。願いが叶いディナーショーで相手役をしてくれて、喜んでいたら組替えに。東京再演で代わって相手役になってくれた、るいちゃんも組替え…。その次のディナーショーで相手役になってくれたひろみちゃんも組替えで、今、となみちゃんと一緒の舞台に出ているんですものねー。

あ、思い出したんですけど。
TCA初日のオープニング、全員が舞台に揃った時。先日は祐飛さんの隣が間違ったと書いたのだけど、隣の隣の…確か、すずみんが笑顔で自信たっぷりに人より早く腕を上げたんだと思う。そして、誰か忘れたけど隣の人が焦り、祐飛さんもあれ?…となってきて^^;曲はもうすぐ終わりにかかる所で、みんなバラバラのタイミングで最後のポーズをとっていたような。今、ここで手を動かしていいかどうか…と迷う、祐飛さんの指先が可愛かったです。
その後、銀橋に出る為にみんなぐるぐる歩き始めるのですが、歩き出しも「あ、ヤバい忘れてた」みたいな、微妙なタイミング。…ところが、後ろの人が気づかずに付いてこない!焦る祐飛さん。みんな歌っているのですから、声をかけるワケにもいかず、でも先に進まなきゃいけない…というところで、その人は気づいてくれてホッとしてました。時間にしてみればほんの僅かの事でしたが、見ている私も焦りましたから、ご本人様達にはすごく長い時間に感じたのではないでしょうか。
でも、後ろを見て焦る祐飛さんは、すごく可愛かったですけどね♪

旅の思い出

2007年9月9日 宝塚
思いもかけずTCAのチケットが手に入り、9月7日、突然大劇場の旅に行ってきました。
あわてて仕事の休みを取ったのですが、おかげさまで台風の一番大変な時に通勤の心配をする必要が無く、申し訳ないような(^^ゞ
TCAは18:30なので、のんびりです。
こんな時、便利なのがスカイマークの神戸空港便の飛行機。羽田−神戸が10,500円。新幹線の回数券利用より安い。最近は飛行機が値上がりしちゃったから、普通の航空会社の飛行機より5千円くらい安い。貧乏人の味方です。しかも、いつでもお席に余裕があって、直前でも取れるのも便利。便数がすごく少なくて、11時公演を見る時は使えないのが残念。
神戸空港は新しくてピカピカ。小さい空港なので、羽田や伊丹のように歩かされることがないのも好き。
三宮で阪急電車に乗り換えますが、大阪よりも人が少なくて動き易いし、街がコンパクトなので歩かされない。…年なもので、旅行荷物を持って歩くのは嫌いなので有難い。

便が少ないので早めに神戸に着く飛行機しか利用できず、三宮で宿に寄る事に。暑い日だったので、お風呂に入ったりして。
大劇場に着き、プログラム600円を購入して、着席。
貧乏な庶民なので、大劇場でTCAを見るなんて滅多に無い事。これで3回目。やっぱりドキドキします。
大空さんをはじめ、お気に入りさん達の出番をチェック。

今年は「モン・パリ」80周年の記念という事で、白井レビューの有名作をイメージしているらしい。
…なんだけど、プログラムを劇場に忘れてきてしまったので、詳細は分からなくなっちゃった(^^ゞ
月組はハレムにさらわれてきた娘達の場面。CSでやってたとこね。
かなみ・れみ・ねねちゃんが、攫われてきて故郷を想う可哀相な娘達。きりやんと祐飛さんが彼女達を追い詰める…。祐飛さん、エロかっこいい…という言葉を使うべきなんでしょうね。
まるで、祐飛さんの為にあるような役でした。
祐飛さんから追い詰められたれみちゃんを庇い、腕を掴まれるかなみちゃん。逃れたれみちゃんが、ねねちゃんと手を取り合って悲嘆にくれる様子にも、心トキメキました。

雪組さんが、NYがテーマだったんだけど、そのレビューが1929年に発表された…というのが、印象的。大恐慌以前だったんでしょうかね?「お金が渦巻くウォール街」みたいな歌詞もありましたけど。ついつい、ラスパの大恐慌の場面の音楽を思い出してしまいました。

二幕は祐飛さんはオープニングとフィナーレしか、出ないのね。
お気に入りの下級生さん達は、バックダンサーでチョコチョコ出場。やっぱり、月組時代にしっかり見ていたひろみちゃんは、二階B席でオペラグラス無しでもすぐに分かります。あと、まっつとみりお君は、まだ一目でわかる程ではないけれど、小さいのでわかりやすい。ねねちゃんは、でかくて分かりやすい。れみちゃんは可愛くて分かりやすい。二幕の始まり、下級生さんがたは「レ・ビジュー・ブリアン」のジャージのお衣装で、月組生はその時の自分のお衣装を着ているようでした。紫のお衣装を着たひろみちゃんが、まるであの公演の時にも月組にいたような錯覚に。雪組さんで修行をしたら、いつか月に帰ってきてくれないかなー。

勿論、祐飛さんもオペラグラス無しでも、シルエットでわかります…が、二幕の幕開き、銀橋で背中向けてたのは気付くのが遅れました。最初銀橋のきりやんの声が聞こえて、一生懸命本舞台を探してた(^^ゞ
「HERO」を歌う時も、フィナーレの大階段の黒燕尾も、すごく素敵でした。祐飛さんらしく、セクシーでドラマチック。燕尾では立ち姿に安定感があって、堂々としてて良かった。

しかし、全員が揃う所は…かなりあやしかったですね。
オープニングもエンディングも隣の人が間違い、祐飛さんもまわりの人も不安になったようで、みんなでぐだぐだに。不安になった祐飛さんも間違えていたようですが、まわりみんな別々の事をしているので、誰がが正しいのか不明でした^^;
初日だからでしょうか、後の二回では大丈夫だったのでしょうか。最後は笑ってしまっていて、可愛かったですけど。

今回は構成的にトップコンビ中心。フィナーレで、トップさん達が一人ずつ公演の主題歌を歌う所では、各組の公演の思い出が蘇りました。
…しかし、月組さんはディナーショーの主題歌でした。月組子は4人しか出ていません。見ていない私には、思い出す記憶が無く寂しかったです。演出家、何を考えてるんでしょう?トップさん達は組を代表して、そこに立っている訳ではないの?頑張った月組子達の思い出を無にされたみたいな気分。

翌日、11時公演を見ました。
祐飛さん、ちょっとお疲れの模様…かな。三回公演ですからねー。
でも、公演は熱のこもったもので「MAHOROBA」の白い鳥には、ちょっとほろりときました。月組頑張れ。
お芝居のほうは「奇跡の男」と歌う皆さんが、以前に見た時よりずっと表情豊かになってて面白い。前は新公前だったので、特に下級生さん達がイキイキしてきた気がしました。早く東京に来てくれないかなー。やっぱり回数見ないと下級生チェックは難しい。 
祐飛さんジグモンドは…ますます探偵さんと仲良しに。仲間達とも更に仲良くなってますね。
居酒屋で、シャンドールが挨拶無しで消えようとしたと言われた時の、ショックも大きくなってて可愛い。息を呑む音が聞こえたような気分。
ヴェロニカ達に紹介される時、「こいつらが、こんな危ない事に巻き込んだから、シャンドールに命の危険まで!」という怒りも大きくなってて可愛い。男らしく、恨み事なんか表には出さないところも素敵。
全てが解決した後の、パーティで別れる時笑顔で手を振る姿が、爽やかで可愛い。

観劇後、観劇仲間と少し喋って楽しかった。
今回は一人旅だったので、ムラで東京の友達と合えると不思議な気分。
プログラムを忘れた話をしたら「それで、…ま、いいか。で済ましちゃったのー?」と笑われました(^^ゞ

ソリオの「焼きたてコーヒー」に、初めて行ったら美味しかった。コーヒーはローストした時から酸化が始まるそうで、本当に香りが良くて、口に含んだ時の香りを楽しむ為にチビチビ飲んでしまいました。

無計画で気ままな、のんびり楽しい一人旅でした。

時は流れる

2007年8月24日 宝塚
なんだか、色々発表されましたねー。
色々反応したいけど。あんまり沢山あって、書く前に疲れてしまいました。まあ、別に無理して書かなくてもいいか…って事で、月組関連にだけ手短に(^^ゞ

越乃さん、月組副組長、よろしくお願いしますm(__)m
今のところ最も若い管理職ということで、大変かとは思いますが(…もしかして最もデカイのかな?)
でも、今の月組にとっては、最良の人選と思います。愛する月組の皆の為に、どうぞお力を尽くして下さい。
あの、でっかいけど可愛いナホちゃんが、副組長か…という感慨はありますが。下級生の頃から見ている生徒さんが管理職になるお年頃とは、私も宝塚ファンの新人を卒業したと言ってもいいのかな。
実をいうと、さお太さんが月組に帰ってきて副組長という噂に期待してはいたのですが…。みとさんと二人で古巣の月組に帰ってきて欲しいと思うくらいですが、みとさんが専科となれば仕方ありませんね。早く月組にも出演して下さらないかなー(^^)

で、私が宝塚ファンになったのが、天海さんの「ME AND MY GIRL」を見たからなんですよ。
13年ぶりの再演だそうで…もう、そんなになるんですね。あれから。初演のファンの方からの評判は良くないとはいえ、私にとっては大切な作品。いつか再演して欲しいとは思っていたのですが…。
私は麻かなコンビには、ビルとサリーが似合うとは思わない派なので、ちょっと複雑。
今、このコンビでは、もっとドラマチックな仕立ての方が似合うと思うんだけどなぁ。
それに、本公演でやるには役が少ないし。その少ない役を分け合う陣容も、今はちょっと違うなーと思う。エリさんも末子はんもいなくなるとなれば余計に。キャストの持ち味と作品の良さの両方がいかせない気がする。できれば、もう数年後で、みちるちゃんとかすずなとかがマリア叔母さまをできるくらいになってから…そのくらいの学年の皆さんの芸風のほうが、この作品にはあってると思うのです。今の月組上級生はちょっと芝居がウェットだから…良い悪いじゃなくて、作品と合うかどうかの問題で。
…なんて思ってしまうのは、作品に愛着があり過ぎるからかな。擦り切れる程にビデオを見てますしね。
勿論、過去と同じように演じて欲しいと思っている訳ではないのです。ただ、海外ミュージカルは役が少ないし、順番に役を振っていく宝塚では諸刃の剣。上手くいく事をひたすら祈ります。
でも、新公はみりお君のビルになると予想されるので、これはすごく楽しみ!絶対見たい(^^)
新公は他のキャストも期待ですね。この作品、過去の新公で異例の抜擢が話題になったのですが、また何かあるのかなー?

で、最後に。
祐飛さんの主演バウのヒロイン。城咲あいちゃん、決定ですね。
「大人のラブ・ストーリー」って事で、他にはいないとは思っておりましたが。
発表されて、やはりホっとしました。スタイルの良いお二人で、美しい舞台になる事でしょうね。
「マジシャンの憂鬱」のオープニングで二人で踊るところ、今までより更に力を入れて見る事になりそうです♪
「エリザベート」見てきました。三度目の観劇にして、MY楽でした。

となみちゃんエリザは益々パワーアップしていたように感じました。
特に「私だけに」では、となみちゃんって、ついこの間まで星組娘役だったんだなぁと、納得してしまいました。月娘の男前な力強さを持ち、星娘のアクション性^^;を身に付けた、雪のお姫様。
最強に素敵でした♪

キムちゃんのルキーニ。ルキーニというキャラでの芝居は、最初と最後のみで、あとほとんどはナレーターとして存在します。このナレーターっぷりが、上手いですよねぇ。毎回、見るたびにテンポが良くなっていたと思います。悪戯な少年のようで、キラキラしてるルキーニ。これも有りなんだなぁ。

かなめちゃんのルドルフも、新鮮な驚きでした。
私が初めてナマの舞台で「エリザベート」を見たのは宙組版で、ルドルフは樹里さん。その後ゆみこさん、祐飛さんと見たのですが、皆さん堅実な感じで立派な“皇太子様”でした。でも、かなめちゃんのルドルフは、可哀想な綺麗な“王子様”なんですね。びっくりした〜(@_@)ルドルフってこういう役だったんだ!追い詰められたキラキラの王子様が、最後に引き金に手をかけた時、ホッとした感じの子供の顔で、僅かに微笑むのが印象的。

ひろみちゃんのエルマー。ついこの間、子供ルドルフで闇に心惹かれる少年を演じていたひろみちゃんが、こんなに立派なオジサマに(*_*)
ひろみエルマーは、ミルクの場面が良いなーと思います。ミルクが手に入らず、困窮する市民に、心から同情するエルマー。
本気で「新しい世界をこの手に掴み取ろう」とする真摯さ。そして、ルドルフを説得する場面の必死さにも心うたれます。人生の全てを賭けたハンガリーの独立を、どんな方法でも手に入れようと全霊をかけるその姿は、美しいと思います。もうすっかり老けたお姿ですが^^;
ちっちゃくて可愛かったひろみちゃんが、立派になったなあ…。

そして以前に見た時、水さんのトート閣下が誘惑者では無いと感じたのは、お姫さまなエリザベートも王子さまなルドルフも、死に誘惑されるような心の歪みを持っていないからなんだな…と思いました。水さんのトート閣下は、罠を仕掛けてはニヤリと笑って彼らを待ち受ける、「運命」の化身。
月組版では、トートを”死”と感じ取りながらも喜んで友達になる、歪んだ少年だったひろみちゃんも、今回のエルマーでは、”死”の誘惑に付け入られるような歪みは感じられません。清く正しく、革命を目指して地道な努力をしている…トートの「罠」の一部です。

最後通告の場面。となみエリザは、フランツが行ってしまった後、部屋に入ってきたトートに気付いて、自分の心が弱くなった時にトートを呼んでしまう…と思っているように感じました。
それで思い出したのですが。

月組版エリザベートで、ルドルフを演じた祐飛さんは小池先生と意見が対立したとか。
小池先生は自殺したルドルフを弱い人間だと言ったそうで。祐飛さんはルドルフは繊細な人間だけど、精神的な弱さ強さは別の話だと思い、先生と沢山話し合い、あのような役作りになったとの事。

これは私には、結構衝撃的な話でした。小池先生の心の健やかさが^^;
エネルギッシュな上に、健全で強い心の持ち主なんだなぁ…と、感心しましたね。
でもねぇ。心が弱いから、”逃げ”で自殺した、というのは現在の世間の一般的な考えかたとは思いますが…でもこれは”死”の誘惑のお話なんですよ?
”死”への憧憬って、耽美趣味の基本じゃないですか。醜く恐ろしい”死”に憧れるという、人間の本来あるべき姿ではない歪んだ心。
…闇に惹かれる欲望、甘美な毒の誘惑を体現したような、彩輝トート閣下を前にして、弱いから自殺した…なんて。
そんな単純な。
祐飛ルドルフは、トート閣下を”死”の誘惑と認識した上で「友達」と呼ぶ歪みが、美しくてとてもセクシーでした。

今回のルドルフ王子を見て、小池先生はまたルドルフは弱いから自殺したと主張したんだろうな、と思いました。小池先生が死の誘惑の甘美さを知る事はないのだろうなーと。
まあ、「エリザ」はお話がしっかりしてるからいいけど。
…「薔薇の封印」のように、耽美ファンタジー系でオリジナル作品を作るのは、もうやめておいたほうがいいかと(-_-;)
ちょっと時間がたってしまいましたが、「エリザベート」感想の続きです。

ゆみこちゃんのフランツ、何度見ても、いいですねー。
私はこの「エリザベート」という作品の中で、一番好きな役は多分フランツなんですよ。
どの役も良くできていて、感情移入してしまうので、”多分”がついてしまうのですが^^;

皇帝フランツって、色々な角度で見る事ができる人物だと思います。解釈によって、沢山の演じ方のバリエーションが想像できます。色々な相反する感情の要素を含んでいるので、どの場面、どのセリフもどんなふうにも演じられる面白い役だと思うんですよ。
演じ甲斐もあるだろうし、見ごたえもある。辛抱役で、”スター”のファンの人に好かれる役じゃないかもしれないけど。
そういう「役」としての面白さもありますし、あまりにも真面目な彼の生き方が好きなんだと思います。

ウィーン版のフランツは、気弱なマザコン男で頭も良くなさそうな、全然良い所のない情け無〜い感じでしたが、それでも好きでした。男の愛嬌と哀愁があって…人間のダメな所の可愛さ、みたいな。あれはあれで、魅力的でした。役者さんも良かったですしね。

で、ゆみこフランツ。二回目の観劇で”夜のボート”の、ゆみこちゃんの歌で泣かされました。
私は、かなりドライアイな感じで(笑)、舞台を見て泣くというのはあんまり無いのですが…やられましたね。
もちろん”歌”そのものが良かったのはありますが、ゆみこフランツのひた向きさ、真っ直ぐで揺るぎの無い心の、健やかな強さのようなものに泣かされたのだと思います。
あんなに年を取っても、若い頃と同じ強さと純粋さで愛しているなんて。決して年を取ったように見えないのでは無く、年を重ねた重みは見えるのに愛し方が変わらない気がする。CSの座談会か何かで、「フランツは超ポジティブシンキング」と小池先生がおっしゃっていたというのを聞いて、笑ってしまったのですが、ゆみこちゃんのフランツは確かにそんな感じがしますね。
となみちゃんの天然エリザベートに対抗できる、強靭なポジティブさ(^^)

あと、三度目の観劇では一幕ラストの「鏡の間」がすごく印象的でした。
「でも私の人生は私のもの」と歌うエリザベートの隣に立ったフランツに、妙な迫力があって…。
たとえ彼女の心を得る事はなくても、それでも、この女はオレのモノだ!みたいな。自分の人生と引き換えに彼女を手に入れた、高揚感と孤独感。この感じ、何かどっかで見たような?と思って…思い出したぞ!
「心中・恋の大和路」の、小判の封印を切る場面です。あの、人生を賭けてしまった一瞬のような迫力で、ゆみこさんから目が離せなかったんです。ゆみこフランツは、真面目で良い人過ぎるので、余計に印象的なんでしょうね。

この雪組バージョンを見て、「エリザベート」という作品の色を決めるのに、フランツとゾフィー親子の二人のウェイトはかなり大きいものなんだな、と思いました。
私にとって、宝塚の「エリザベート」の印象は、花組版まではずっと”華やかなホームドラマ”だったんです。月組版は”歴史上の人物、エリザベート皇后をめぐる人間ドラマ”、今回の雪組版は”トートとエリザベートのファンタジックな恋物語”という感じかな。

そして、以前の、ホームドラマの印象を決定付けていたのは、ゾフィーだったんだと、今回改めて思いました。
花組版までの、ゾフィーの物語上の位置づけは”エリザベートに敵対する姑”だったと思うのですが。月組の美々さん以降は”国の将来的な危機を見通した皇太后”という存在に変貌しました。ウィーン版でゾフィーのソロが追加され、位置づけが明確になったのに呼応したようですね。

美々さんのゾフィーは、理知的で聡明でした。ただ一人だけ、エリザベートがもたらすものに気づいている皇太后。
以前からあった歌詞ですが、美々さんが歌った事で「君主制の危機」という言葉の重要さに初めて気づいたんですよ。
教会に行かないのも、教育に批判的なのも「君主制」の立脚点を揺るがすもの。エリザベートは、単に”皇后の義務”を果たさないだけではなく、「君主制」の世の中を拒否しているという事。彼女の求める”自由”は、「死刑囚の母」の息子が叫んだ”自由”と同質なものなんですね。
女性であるエリザベートの”革命”は小さなものでしたが、麻子エリザベートは一人で孤独に戦う革命家なんだ…と、美々さんのゾフィー、ガイチさんのフランツ、祐飛ルドルフというハプスブルクの行く末を案じる人々との対比で、くっきりと見えた気がしました。

はまこさんのゾフィー様も、もはや「ホームドラマ」の世界には戻れない。この世でただ一人、ハプスブルクの危機を見通している皇太后。
男役さんの迫力で、強さが際立つゾフィー様ですが、情の深さと温かみを強く感じますね。この愛情深さが、ゆみこフランツをあんなに優しい人に育てたんですね(^^)
雪組再演版「エリザベート」が、優しく暖かい雰囲気で包まれているのは、やはりこのゾフィー・フランツ親子が色を決めているのだな、と思いました。

書きたい事が多すぎて、全然追いつけませんが…。今日はこれまでで。
となみちゃんのエリザベートは、少女時代〜バートイシュルの場面の可愛らしさが、素晴らしいですね〜。
あの無垢な可憐さ、無邪気さが、作品全体をふわりと包むベールになっている気がします。

バートイシュルの場面の可愛いこと!もうメロメロです。皇帝陛下がメロメロになっちゃうのも、当然です。あんなに可愛くては仕方がありません。鹿の角を拾って渡された時から、もう一瞬たりとも、エリザベートから目が離せない(^^)
転がったオレンジを追いかけて拾うところは、スカートの青い部分が完全にめくれる程の勢いで、本当に可愛いの〜!
その後椅子に座って一息ついた時には、膝の間に両手をついてましたから、結構足を広げて座ってますよね。それがまた、可愛いんだ。まだまだ、子供ですよね。
ダンスを申し込まれた後、フランツと二人の場面。最初にキスをされる時、硬くなってちょっと身を引こうとするんですよね。まだ17歳なんだよねーと、しみじみしてしいます。これは月の新公で夢咲ねねちゃんもやっていた仕草ですね。(代々のエリザがどのくらいやっているのかは知りませんが)すごく好きだったので、となみちゃんも採用してくれて嬉しいです。
この後の「嵐も怖くない」は、あまりに初々しくて、幸せな場面で、だからこそ、その後の二人の人生を考えて切ない気持ちになります。ここがこんなにも、ほのぼのと優しい、幸せな場面になるとは。となみエリザのあまりの可愛いさと、ゆみこフランツの盲目っぷり^^;の為ですね。

今回、となみエリザベートを見て、「三つ子の魂百まで」と思いましたね。となみちゃんもやはり「月組娘役」の生まれなんだな、と。
今まで、全然そんな事無かったんですけどね。やはりこういう強い役になると、今まで忘れていた「月組娘役」の強さが出てきちゃったんでしょうかね^^;豪華なドレスの”皇后様”を見ながら、月組下級生時代、セリフの無いウェイトレス役などで「顔芸」をしていた頃のとなみちゃんを思い出したのが、不思議ですが^^;
私、となみちゃんの表情の演技って、月組下級生の頃から大好きだったんですよ。心の深いところから、自然に浮かんでくる作為の無い表情で。
あの大きな瞳が、感情を雄弁に語ってくれるんですよね。
となみちゃんは、本当に存在丸ごとで”エリザベート”にぶつかっているのが、小気味良いですね。
それに、スタイルが良くて、ドレスが本当に良く映えます。
娘役としては長身のとなみちゃんですが、あの豪華なドレスのゴージャズ感の為には、あのくらいの身長でのスカート丈が無いとね。
それに、デコルテのラインの美しさ。マリーアントワネットの時にも、宝塚のドレスを着る為にある首だと思いましたが(^^)エリザのほうが、ドレスのバリエーションが豊富で、娘役さんの美しさを堪能できますね♪

私は月組版の麻子エリザベートが、大好きだったんです。花組さんの大鳥さんのエリザも好きでしたが、更に強力になった、男役の演じる”意思の強い”エリザベート。あの力強いエリザを見た後、普通の娘役の演じるエリザベートは面白くないんじゃないかなーと、当時から思っておりました。
なのであまり期待は無く、でも、どんなものか興味津々で見に行きました。

でも、となみエリザベートは、私の今までのイメージを根底から覆すものでした。麻子エリザベートとは、全然違うもので面白かったですね。
「夢を売るフェアリー」のエリザベート。もぎたてのフルーツ、フレッシュで天然100%のエリザベート。
不思議な甘さと初々しさ、片意地など無く内に篭ったものでもない、悲壮感の伴わない自然な強さ。
まさにとなみちゃんの命の炎の輝きを見るような…そしてそれが、黄泉の帝王を魅了するエリザベートの命の輝きと重なっていて。
今までのイメージとは違うけれど、これもまた”エリザベート”だと納得できるものでしたね。
そして、ラストの昇天の場面の静かで穏やかな笑顔は、二度目に見て改めて感動しました。
彼女は人生の全てを受け入れ、フェアリーは”人間”になった。
人が”死”を愛する時、それは人生の全てを受け入れ、全てを愛する時なんだろうな…と。
うん、となみちゃんのエリザベート、見る事ができて、良かったです。
「エリザベート」二回目、見てきました。
やっぱり、二回目は違うものが見えてくるものですね。
初見で感じた「新鮮さ」の意味が、私なりに納得できました。

水トート閣下って、閣下自身は「孤独」ではないんですね!
トートは”死”として完全な充足した存在だった。けれど、エリザベートに恋をした事で傷を負い「青い血を流す」不完全な存在になる。
これは驚きでした。
今までの(少なくとも私が見た限りの)宝塚のトート閣下は、皆、とても孤独な存在だったように思います。(私はサエちゃんトート閣下の寂しがり方が大好きでした)←どっかで、こんなセリフがあったような(^^ゞ
それは、エリザベートが孤独な存在であるのと同じで、もう決まりごとだと思っていたんです。改めて考えてみる事も無いくらいに。

後半、トート閣下がエリザベートを「ずうっと、待っている」穏やかさが、すごく印象的で…。
ルドルフに対しても、エリザベートに対しても水トートは”誘惑者”ではなく、”待っている”存在なんだなーと思いました。
そして、黄泉の世界に向かう二人を優しく迎えてくれる「いつか辿り着くところ」。
エリザベートに拒否された時、すごく激しい(怖いくらいの)反応を返すのと、昇天の場面で彼女を優しく包み込む余裕の、ギャップが大きくて。こんなに余裕のあるトート閣下って新鮮だなぁ…と初見で感じたのです。

二回目の観劇で、やはり初見で印象的だった少女のエリザベートに命を返した後、立ち去る時に「待って!」と呼びかけられて振り返ったトート閣下の満面の笑顔を見て、「ああ!水トート閣下自身は孤独ではないんだ!」と私なりに納得したのです。

エリザベートを黄泉の世界から戻した後の場面。月組版では、家族や親戚に囲まれた明るい光の中にいる少女と、青白い何も無い空間に一人で歩み去るサエちゃんトートの孤独な背中が本当に対照的で。凍てつくようなトートの孤独を表す場面、だと思っていました。今回はトートの”恋の始まり”の場面なんですね。うーん、なるほど。

今まで「エリザベート」って、ただ一人黄泉の世界に君臨する孤独なトートが、その孤独故にエリザベートを求める…というお話だと思っていたのですが。
今回は、トートの「孤独」はエリザベートに恋をして求めるのに、何の関係も無いんだ!
目からウロコでしたね。
そういえば、今回のウィーン版のトートも別に孤独な存在でもなく、完全な存在だったような。まあ、あれは別の話だから関係無いっちゃ無いけど。

とりあえず、これで。

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