この作品の「近未来」世界の設定、詳しくはほとんど語られていません。
色々な事の端々から、色々推察するのみ。でも、それが物語を理解するのに必要な事なので、色々考えなくては話がわからない。
そして色々な人と考察を話し合ったり、ブログ等で読むと、皆さん結構違う解釈をしているらしい^^;
という訳で、私も自分なりの物語を考察する為の「シャングリラ世界設定」を書き留めておきます。

核戦争後の日本。
関西の「水源の村」出身の「蛇の目一座」のルイは電気というものを知りません。
でも、東京の九龍客桟のあたりはネオンサインが煌めいていますし、秋葉原にはパソコンも売っている。ペンダントに仕込める程の、小型の発信機も簡単に手に入るらしい。
東京は戦争中、中国に割譲されていた…という事は、中国も敵だったのかな?だから大陸に近い、関西の方が被害が大きかったのでしょうか。もしかすると、核の爆心地は関西方面なのかもしれません。
東京は割りと戦争の傷が浅く、機械類も発電所もかなり無傷で残っているらしい。
この作品中、戦争中の事を語る人物はいませんし、水源の村には水を祀る宗教が発生している所をみると、戦争はいつの事なのか。
残っているパソコンなどの寿命も鑑みると、戦後40年から50年程度、というところでしょうか。発信機等の小さな機械の寿命なんて短そうだけど、あの世界で新たに生産はできないだろうになぁ…。ま、それを言うなら、ペットボトルの製造もできないだろうけど、あんなのせいぜい数年でダメになるよなーとか、見た観客全員がつっこんでますよね^^;

関西のほうが核の被害が大きかったと考えると、人体に対する影響も深刻なのかも。
雨が汚染されているという事は、その雨水に濡れた土は、汚染を蓄積している筈。でも、土埃などに触れない事も、吸い込む事も、防ぐのは難しい事でしょう。
直接雨に濡れなくても、人間は放射線と酸の影響で、とても寿命が短いのでは…と考えられます。
更に治安も悪く、暴力に晒されて、人々にとって「死」はとても近いもののような気がします。子供を生んで次の世代を残したら、簡単に命を落とすような人が多いのでは。だから孤児が溢れ、親を亡くした子供達も、守ってくれる大人がいなければ生きていくことは難しいでしょう。
世代交代も早くなるので、教育も行き届かず、関西では戦前の知識は容易に忘れ去られていった…のかな。

最初に見た時から、私がずっと引っかかりを覚えるのが「村人達って、農民なんだよね?」という事。
見た目はどう見ても農民っぽい感じですが、だったら真っ先に農作物についての心配がある筈、だと思うんですよねー、普通。
雨が降らず旱魃があると、農作物は枯れて、飢饉がおきる。
人が必要とする飲み水の量はたかが知れていますが、田畑の作物はそうはいきません。まともに食べていくだけの量の作物を栽培する為には、飲み水など比べ物にならない程の、大量の水を必要とする筈です。旱魃の時の”水争い”は、田畑に引く水を争う事です。水が不足する時、人は渇きではなく、飢えて滅びるのです。
この作中では、水は不足していても、食べ物に困るという描写は出てこない。脚本のいい加減さを、一番感じるところです。

地表は水も土も汚染された世界。
自然の木は、かなり珍しいものらしい。
それでも、人はやはり農作物を育てて、食べていく事でしょう。汚染されてない土を確保して、汚染された雨に濡れないように、汚染された土と混じらないように。でも、適度に日に当てて…となると、あまり大規模な農業はできない事と思われます。おそらく、牛や豚などの大型の家畜を養う力も乏しい筈。鶏くらいなら大丈夫かな?魚も難しいよね?きっと。
人間が必要とする栄養は、かなりの部分、植物に頼るしかないのでは?動物性たんぱくが摂れない場合、一人の人間が必要とする穀物は結構な量になるものです。
今、核戦争などが起きれば、直接の戦争被害は勿論、食糧生産力の低下によって世界の人口は激減するだろうと考えられています。
地域の人口を決めるのは、その場所の食料生産力。この世界では、更に「きれいな飲み水」の量が、養える人口を決めている模様。
だから、”よそ者”に貴重な水を恵んでいる余裕は、無い。この村の今の人口が、この土地の生産力で生活を賄える、ぴったりの人数なのだろうと思います。
人口が減る…というのは簡単だけど、つまり弱い者から死んでいくという事。

逆に、食料生産能力と水が十分にある土地なら、人口は増やして労働力を確保したいのかも。何しろ簡単に人が死ぬ時代だし、斃れて働けなくなる時もくるかもしれない。互いに助けあう事で、自分達の危機の時に備えるべきでしょう。情けは人の為ならず。健康保険も年金もない世の中ですからね^^;
ソラが最後に辿りついた「シャングリラ」、さっつんの住む村は、そういう場所なのかもしれません。
隣の家や親戚などが、子供を遺して亡くなったら…親を亡くした子供達を、人は無碍にもできない。次の世代の貴重な労働力ですから。
そんな時、捨て子を連れたソラが流れ着いて、誰かがやらなくてはならない「村の子供達」を面倒見てくれるなら、有り難い事だったのでは。

村の廃屋と水と食べ物を提供する事で、元気なソラの労働力も得られて、一石二鳥、ギブアンドテイク。
閉鎖された小さな村なら、新しい遺伝子が混じる事も歓迎されると思う。なにしろイイ男だし、優秀らしいし。村に未婚の娘がいたら、嫁を取らせてしまえば、もう「余所者」ではなくなります。
さっつんの妹の、りりこちゃん(勝手に決定。歌ウマ兄妹)など、「ぜひ!」とオススメされてたりして(^^)
そして、ソラは適当に断っていたので、「あいつぅ!」(彼女がいるなら、そう言えばいいのに)と、なったのかも…なんてね♪

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