身勝手な人〜カサブランカ その8〜
2010年2月21日 宙組月組公演「HAMLET!!」見てきました。
すごーく楽しかったです。
主演者、まさお君(龍 真咲)の比重の高い作品。シェイクスピアといえば、長台詞。かなり歌に仕立てていた部分もありましたが、やはり難しい台詞も多くて。
まさお君、大活躍でした。演出指示のものらしい、あの不思議な髪型とお化粧には??ではありましたが。一人で歌って踊って大奮闘でした。いや、ともかく、よく歌ってましたね。頑張ってた。
そして、オフィーリアの蘭乃はなちゃん、かわいいいいいいい!このオフィーリアだけでも、見に行った価値が有りました。
下級生中心の公演ですが、皆さん大活躍で楽しかった♪
さすがに藤井先生らしく、ショーアップされた華やかな楽しい「ハムレット」。
でも昨年末に七帆さん目当てで見た「笑いすぎたハムレット」のほうが、シェイクスピアを見た!という気分になったのが、不思議です^^;
そういうところが、お芝居の面白さかな。まあ、詳しい感想は、また見てから書く事として。
早いところ、「カサブランカ」について書いてしまいます。
抜粋ですが、やっと、映画版をもう一度見てみました。
対訳版シナリオを入手してから、映画の翻訳についても確認してみたかったのです。「君の瞳に乾杯」という、超訳のある字幕の翻訳、実は他にも超訳があって、元のシナリオと違っているのでは?という疑惑があり^^;
確認したくてこの対訳シナリオを入手したので、映画と見比べてみたくて。
シナリオを読んだ限り、省略は沢山あるけれどもそんなに違いは無いなーとは思っていたのですが。
最後に、大きな違いがありました。
二日目の深夜のカフェの場面。舞台でいうと「世界の果てまでも」の後の会話にあたる部分。
「これからどうする?」
「分からない…ただ、もうあなたと別れる力は残っていない」
「ラズロを脱出させてあげて、あの人の使命を全うさせる事が出来るのはあなただけなのよ」
「だが、彼は君を失う」
この「だが、彼は君を失う」の台詞が、「よかろう。君は渡せない」と言う字幕になっていました。
これは、随分、意味が違いますよね。「渡せない」という、リックの意思による言葉になっています。
実は、この場面のリックの台詞、納得できない気分があって。
「これからどうする?」「だが、彼は君を失う」って、なんて、勝手な言い分!
なんなの、この男。
…と、実はずーーーっと思ってました。最初に映画を見た時から、ずっと。大劇場初日に、オオゾラさんのリック像に感心したのですが、それでも引っかかる所があって。
だって、通行証という切り札をチラつかせて「通行証は売らない。理由は妻にきいてみろ」って、つまり「通行証が欲しければ、ラズロの命が惜しければ、自分のモノになれ」と、暗にほのめかした言葉ですよね。彼女は、言われたとおり、一人でリックに会いに行く。
そして、彼女は何を言ってもリックを説得できず、結局隠していた本心を晒す事になる。…でも、あんなにしつこく彼女を振り回しておいて。
中大兄皇子さまのように「ラズロには、俺が話す」とか、言ってもいいんじゃないの?と、思ってました。
きっと、あの字幕の翻訳者も、リックに不満があったのだと思う。そして「君は渡せない」と、超訳というか、意味の違う字幕にしちゃったんじゃないかと思ったりして。
実は以前に書いた、多くの方の感想で「イルザが勝手な女」というのに吃驚した話。私、逆だと思っていたのです。
リックって、本当になんて勝手で、迷惑で、嫌な男だと。
イルザにしつこく言いがかりをつけたうえに、通行証をタテに、脅迫。そして、彼女を手に入れて満足したら、今度は、勝手に自分と彼女の人生思い返して。
「一生後悔する事になる」って。
だから、最初からイルザはラズロをサポートする人生を、選んでるじゃん!!
挙句の果ては、勝手に一人だけ使命に燃えて。カッコつけちゃって。
自分だけが傷ついたような顔をして、悲劇のヒーロー気取り。
まったく、男なんて、悲劇のヒーロー大好きなんだから。
だったら、最初から脅迫なんてするなよ…と。実は、ひそかに思っていたのです。
だから「イルザが身勝手」説を知った時は、世の中色々な感じ方があるものだと思いましたね。
でも、イルザの人生、ほとんど選択の余地は与えられてないんですよね。
彼女が選ぶ事ができたのは、ラズロが死んだと思っていた時に出あったリックと付き合う事だけ。あとは、状況に流される事しかできていないんです。
幼い頃から聞かされていた英雄に出会い、彼の理想を教育されて、妻に望まれて。彼の死の報せに呆然として。
彼が無事だったという知らせを受けて、彼の元に戻らざるを得なくて。
それでも、それはもう、彼女の人生そのものとなってしまっていた道だから。まだ、忘れられないリックとの恋を押し殺しても、ラズロとの道を選んで歩こうとしているのに。そのラズロの為に、彼女はリックに向き合うしかない。逃げ道を塞がれて、結局、リックへの想いに流されて。
悩んだ末にリックを選んだつもりだったのに、彼女の知らない間に、男たちに譲り合いされちゃって。
彼女はその状況で選べる最良の道を選んだつもりでも、その選べる範囲は、とても狭かったのです。
勿論、傷ついたラズロを見捨てて、リックと共にパリを脱出!という道を選ぶという事もできたけれど。
…そんな勝手な女だったら、物語にならないですものね^^;このお話し、始まらずに済んでしまいます。
彼女は少ない選択肢の中から、常に人間として”正しい”道を選ぼうとする。それって、普通の事だと思う。運命と時代に翻弄されるだけの普通の女性。
でもリックは、その”正しい道”を進もうとして、”正しい”と信じた道が、人を傷つける結果となり打ちのめされた…という過去を持つ。だから、”正しい道”をそのまま選ぼうとはしない。今回、リックの過去を書き込んで下さった小池先生も、リックの勝手さをフォローする為?と、勝手に思ったり。
リックが武器商人の過去を、悔いる場面がある事で、観客は随分リックの心情に寄り添う事ができます。
そして、東京公演初日からすぐの事だったと思うのですが。
最初にカフェでリックと再会して見つめ合う場面で、すみ花ちゃんの目にぶわっと涙が盛り上がってきた事がありました。
でも、イルザがここで泣いたら、ちょっとおかしい。すみ花ちゃん、頑張れー!と、心の中で応援していたら、なんとか瞬きをして、涙がこぼれるのは防いでいました。見つめ合ってるオオゾラさんも、きっと心の中で「ヤバい、頑張れ」と、思っていらしたのでは^^;
そんなすみ花ちゃんのイルザは、まだリックの事を愛しているのは、バレバレで。
その後、皆さんの芝居も、イルザがまだリックを愛している事をわかっている前提で進むようになったような気がしています。
そして、切り札を振りかざし、ラズロの運命を握ったリックさん。もしも、イルザがリックへの愛を失っているのなら、かなり酷い脅迫者です。
ラズロに過去の二人の関係を匂わせて、夫婦仲に水を差そうとするあたり、ルノー大尉よりずっと悪質です。
だから、イルザがリックを愛しているのが見えているほうが、観客的には物語に素直に入り込めるような気がするのです。主人公の悪人度が低いほうが、感情移入しやすいですからね。
すみ花ちゃんの、嘘がつけない不器用なイルザが、リックを嫌な男と感じさせないようにしてくれたのかも。
いや、勿論、オオゾラさんは、私の斜めな目線から見た嫌な男リックを、説得力のある人物像として組み立ててくれたと思いますが。
そして結局のところ、その嫌な男であるところが、リックの愛しいところであり、この物語の魅力でもあるのだろうなーと。
それについては、また〜。
すごーく楽しかったです。
主演者、まさお君(龍 真咲)の比重の高い作品。シェイクスピアといえば、長台詞。かなり歌に仕立てていた部分もありましたが、やはり難しい台詞も多くて。
まさお君、大活躍でした。演出指示のものらしい、あの不思議な髪型とお化粧には??ではありましたが。一人で歌って踊って大奮闘でした。いや、ともかく、よく歌ってましたね。頑張ってた。
そして、オフィーリアの蘭乃はなちゃん、かわいいいいいいい!このオフィーリアだけでも、見に行った価値が有りました。
下級生中心の公演ですが、皆さん大活躍で楽しかった♪
さすがに藤井先生らしく、ショーアップされた華やかな楽しい「ハムレット」。
でも昨年末に七帆さん目当てで見た「笑いすぎたハムレット」のほうが、シェイクスピアを見た!という気分になったのが、不思議です^^;
そういうところが、お芝居の面白さかな。まあ、詳しい感想は、また見てから書く事として。
早いところ、「カサブランカ」について書いてしまいます。
抜粋ですが、やっと、映画版をもう一度見てみました。
対訳版シナリオを入手してから、映画の翻訳についても確認してみたかったのです。「君の瞳に乾杯」という、超訳のある字幕の翻訳、実は他にも超訳があって、元のシナリオと違っているのでは?という疑惑があり^^;
確認したくてこの対訳シナリオを入手したので、映画と見比べてみたくて。
シナリオを読んだ限り、省略は沢山あるけれどもそんなに違いは無いなーとは思っていたのですが。
最後に、大きな違いがありました。
二日目の深夜のカフェの場面。舞台でいうと「世界の果てまでも」の後の会話にあたる部分。
「これからどうする?」
「分からない…ただ、もうあなたと別れる力は残っていない」
「ラズロを脱出させてあげて、あの人の使命を全うさせる事が出来るのはあなただけなのよ」
「だが、彼は君を失う」
この「だが、彼は君を失う」の台詞が、「よかろう。君は渡せない」と言う字幕になっていました。
これは、随分、意味が違いますよね。「渡せない」という、リックの意思による言葉になっています。
実は、この場面のリックの台詞、納得できない気分があって。
「これからどうする?」「だが、彼は君を失う」って、なんて、勝手な言い分!
なんなの、この男。
…と、実はずーーーっと思ってました。最初に映画を見た時から、ずっと。大劇場初日に、オオゾラさんのリック像に感心したのですが、それでも引っかかる所があって。
だって、通行証という切り札をチラつかせて「通行証は売らない。理由は妻にきいてみろ」って、つまり「通行証が欲しければ、ラズロの命が惜しければ、自分のモノになれ」と、暗にほのめかした言葉ですよね。彼女は、言われたとおり、一人でリックに会いに行く。
そして、彼女は何を言ってもリックを説得できず、結局隠していた本心を晒す事になる。…でも、あんなにしつこく彼女を振り回しておいて。
中大兄皇子さまのように「ラズロには、俺が話す」とか、言ってもいいんじゃないの?と、思ってました。
きっと、あの字幕の翻訳者も、リックに不満があったのだと思う。そして「君は渡せない」と、超訳というか、意味の違う字幕にしちゃったんじゃないかと思ったりして。
実は以前に書いた、多くの方の感想で「イルザが勝手な女」というのに吃驚した話。私、逆だと思っていたのです。
リックって、本当になんて勝手で、迷惑で、嫌な男だと。
イルザにしつこく言いがかりをつけたうえに、通行証をタテに、脅迫。そして、彼女を手に入れて満足したら、今度は、勝手に自分と彼女の人生思い返して。
「一生後悔する事になる」って。
だから、最初からイルザはラズロをサポートする人生を、選んでるじゃん!!
挙句の果ては、勝手に一人だけ使命に燃えて。カッコつけちゃって。
自分だけが傷ついたような顔をして、悲劇のヒーロー気取り。
まったく、男なんて、悲劇のヒーロー大好きなんだから。
だったら、最初から脅迫なんてするなよ…と。実は、ひそかに思っていたのです。
だから「イルザが身勝手」説を知った時は、世の中色々な感じ方があるものだと思いましたね。
でも、イルザの人生、ほとんど選択の余地は与えられてないんですよね。
彼女が選ぶ事ができたのは、ラズロが死んだと思っていた時に出あったリックと付き合う事だけ。あとは、状況に流される事しかできていないんです。
幼い頃から聞かされていた英雄に出会い、彼の理想を教育されて、妻に望まれて。彼の死の報せに呆然として。
彼が無事だったという知らせを受けて、彼の元に戻らざるを得なくて。
それでも、それはもう、彼女の人生そのものとなってしまっていた道だから。まだ、忘れられないリックとの恋を押し殺しても、ラズロとの道を選んで歩こうとしているのに。そのラズロの為に、彼女はリックに向き合うしかない。逃げ道を塞がれて、結局、リックへの想いに流されて。
悩んだ末にリックを選んだつもりだったのに、彼女の知らない間に、男たちに譲り合いされちゃって。
彼女はその状況で選べる最良の道を選んだつもりでも、その選べる範囲は、とても狭かったのです。
勿論、傷ついたラズロを見捨てて、リックと共にパリを脱出!という道を選ぶという事もできたけれど。
…そんな勝手な女だったら、物語にならないですものね^^;このお話し、始まらずに済んでしまいます。
彼女は少ない選択肢の中から、常に人間として”正しい”道を選ぼうとする。それって、普通の事だと思う。運命と時代に翻弄されるだけの普通の女性。
でもリックは、その”正しい道”を進もうとして、”正しい”と信じた道が、人を傷つける結果となり打ちのめされた…という過去を持つ。だから、”正しい道”をそのまま選ぼうとはしない。今回、リックの過去を書き込んで下さった小池先生も、リックの勝手さをフォローする為?と、勝手に思ったり。
リックが武器商人の過去を、悔いる場面がある事で、観客は随分リックの心情に寄り添う事ができます。
そして、東京公演初日からすぐの事だったと思うのですが。
最初にカフェでリックと再会して見つめ合う場面で、すみ花ちゃんの目にぶわっと涙が盛り上がってきた事がありました。
でも、イルザがここで泣いたら、ちょっとおかしい。すみ花ちゃん、頑張れー!と、心の中で応援していたら、なんとか瞬きをして、涙がこぼれるのは防いでいました。見つめ合ってるオオゾラさんも、きっと心の中で「ヤバい、頑張れ」と、思っていらしたのでは^^;
そんなすみ花ちゃんのイルザは、まだリックの事を愛しているのは、バレバレで。
その後、皆さんの芝居も、イルザがまだリックを愛している事をわかっている前提で進むようになったような気がしています。
そして、切り札を振りかざし、ラズロの運命を握ったリックさん。もしも、イルザがリックへの愛を失っているのなら、かなり酷い脅迫者です。
ラズロに過去の二人の関係を匂わせて、夫婦仲に水を差そうとするあたり、ルノー大尉よりずっと悪質です。
だから、イルザがリックを愛しているのが見えているほうが、観客的には物語に素直に入り込めるような気がするのです。主人公の悪人度が低いほうが、感情移入しやすいですからね。
すみ花ちゃんの、嘘がつけない不器用なイルザが、リックを嫌な男と感じさせないようにしてくれたのかも。
いや、勿論、オオゾラさんは、私の斜めな目線から見た嫌な男リックを、説得力のある人物像として組み立ててくれたと思いますが。
そして結局のところ、その嫌な男であるところが、リックの愛しいところであり、この物語の魅力でもあるのだろうなーと。
それについては、また〜。
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