「カサブランカ」新人公演
2010年1月26日 宙組「カサブランカ」新人公演、見てきました。
パリの場面の全カットを含め、小池先生が追加したスペクタクルやミュージカル的要素を無かった事にして、基本的に映画に近い流れに。芝居の方向性もどちらかと言えば映画版に近いイメージになっていた気がします。
ただし映画ではあった、パリの別れの回想という重要な場面がカットというのは、ちょっとツライものでした。
かの名台詞はパリの二人の会話を別れで繰り返すのが、イイところですしね。かといって、映画と同じように必要な部分だけ採用…とかは、やっぱり無理だったのかなぁ。
一番割をくったのは、イルザのえりちゃんかな?それでも、あまりハンデを感じさせずにイルザの愛を表現できていて、感心しました。
主演のカチャ・凪七 瑠海さんは、今回は本当に大変な新人公演でしたね。
まず、持ち味が全然違う役です。もうどうしようもないレベルで、合わない役。
せっかくの、明るく華やか爽やかな、少年めいた透明な持ち味が、マイナスにしか働かない役。誰もが百回くらい思った事だと思いますが、タニちゃんの役で新公主演ができれば良かったのにと、改めて思いました。
とはいえ、宝塚では役者の持ち味に合わない役を、ポジションとしてこなさなければならない事はたくさんあります。オオゾラさんに、ナイスリーというコメディ役がまわってきた悲劇もありましたし^^;
みっちゃん程になんでも達者にこなす人が、「薔薇の封印」新公主演で、耽美なヴァンパイヤ役が、びみょーになってしまった事もありました。
新公は、そんな持ち味に反する役を「なんとかする」事を学ぶ場でもあります。
でも今回は、カチャなりのリック像というのが、ちょっと曖昧だった気がしますね。本役のオオゾラさんとは、違うイメージを持って役作りをしているのはわかるのですが。
やはり真っ直ぐな人なので、無理にリックの屈折を演じようとして、考え過ぎちゃったような印象でした。
しかし、台詞をとばした後からの演技は集中力も素晴らしく、カチャなりのリックとして爽やかな終幕となりました。ラストをキチンと終われたので、終演後の印象は良かったです。この経験を、ぜひ大きなプラスに転じて欲しいと願います。
感心したのはオオゾラさんのリックの仕草を、かなり完璧に再現した事。その再現度の高さは、多分祐飛ファンのほうがわかると思います。すごく頑張って、オオゾラさんの仕草を見てくれんだな。歩き方、立ち方、座り方、タバコやスーツの扱いをはじめ、手の動き、肩の動き…本当に細かく観察して、自分のものとした努力に感心しました。
オオゾラさんが、長い年月をかけて積み上げ、磨き抜いてきた、”男役”の身体表現としてのかっこいい仕草を、しっかり見てくれ事は嬉しかったです。先日も書きましたが、あのオオゾラさんの立ち方を含めた男役芸は、おそらく久世さんをはじめマミさんやリカさんなどの偉大な先輩方のエッセンスを取り入れて、オオゾラさんなりに表現しているもの。それをカチャなりのカタチ咀嚼して、また次の世代にまで、伝えて下さるといいなー。
そしてもう一つ面白かったのが、カチャのリックは本役と違って”動き”を感情表現のメインとはしなかった事。
同じような動きを、違う心の動きで見る事で、逆に本役の表現がくっきり見えました。大空リックは、全ての体の動きが感情表現だと、改めて思いましたね。無駄な動きは一つも無いんだ。
目線の動き、肩や手の僅かな動き、動きの緩急などが、リックの心が動く時を表現している。それがちょうど、観客の心がリックの心の動きを理解する、ぴったりの間、なんですよね。オオゾラさんが深く考えて作り上げた、仕草を積上げてつくる芝居に、改めて気付かされた新公でした。
イルザの藤咲えりちゃん、素敵でしたー。
大劇場の時より、髪型もふんわりと華やかで、美しくなっていましたね。儚げで美しく品があり、しっとりした雰囲気もあり、でも意外な気の強さも持っていて。
とても細やかな表現で、イルザの揺れる心を見せてくれました。パリの場面全カットという、バーグマンよりも難しい役になってましたけれど、違和感を感じさせなかったのは、すごい。敬意を持ってラズロを愛しているのは確かだけれど、リックとの恋を捨てきれない、抑えられない情熱を感じました。
とてもしっかりした、知的な美人さんの雰囲気があるので、逆に、情熱の強さが際立つ感じ。芝居の傾向としては、やはり映画版に近い気がしました。
というよりも、本役とあまりにも違い過ぎて面白かったです。改めて、すみ花ちゃんって、本当に天才なんだなーと、思い知らされました。色々な事をぶっ飛ばして、イルザとして舞台に存在しているんだな、と。
えりちゃんのイルザは、宝塚の娘役の枠の中で、きっちりと「カサブランカ」のイルザを作り上げた感じ。かなり完成度の高いイルザだったと思います。宝塚のヒロインとして、観客の心を引っ張って舞台を作る力は十分感じられたので、今後、どういう芝居を見せてくれるのかとても楽しみです♪
英雄ヴィクター・ラズロ役の七海 ひろきさん、かっこいいの一言。
私の中では今回の新公で一番の大ヒット!でした。
実直とさえ言えるような誠実さと、あたたかさを持ちながら、ピリッとした鋭い雰囲気のラズロ。
本役のらんとむさんのあくまでも抑えた演技とは違い、強さとカリスマ性を前に出したイメージは、映画版のラズロに近いような気もしました。
でも映画も本役さんも、イルザをめぐるリックとの会話では、表情は勿論、目の色にさえ感情を見せませんが、カイちゃんラズロは違いました。
特に、カフェでの出会いの場面。ただならぬ様子のリックとイルザの会話の一言一言に、表情は変えないけれど、目の奥に浮かぶ感情の色が揺れ動くのを感じるのです。思わず、見とれてしまいました。なんて、ストレートな人なんだろう。
イルザに対する愛が溢れるようで、豊かな心を持った優しいラズロでした。反ナチス指導者の強い存在感と、愛に揺れる、優しすぎる男の二面性をとても魅力的に見せてくれたと思います。
カイちゃんは、最近の私の大注目の人だったのですが、期待以上の芝居でした。「逆転裁判2」のローランド君で見せた黒い部分を、うまく強さに変換でいたのがヒットだったのかな。
優しくて誠実で、愛に溢れた人でありながら、影も毒も併せ持っているという、非常に面白い個性。その”毒”が、宝塚の男役としては、非常に強力な武器です。いつも、フィナーレで、カイちゃんの毒が垣間見れるのを楽しみにしているのです。ぜひ更に磨いて、もっともっとカッコいい男役に欲しいですね。
さて、時間切れなので、続きはまた今度…。
パリの場面の全カットを含め、小池先生が追加したスペクタクルやミュージカル的要素を無かった事にして、基本的に映画に近い流れに。芝居の方向性もどちらかと言えば映画版に近いイメージになっていた気がします。
ただし映画ではあった、パリの別れの回想という重要な場面がカットというのは、ちょっとツライものでした。
かの名台詞はパリの二人の会話を別れで繰り返すのが、イイところですしね。かといって、映画と同じように必要な部分だけ採用…とかは、やっぱり無理だったのかなぁ。
一番割をくったのは、イルザのえりちゃんかな?それでも、あまりハンデを感じさせずにイルザの愛を表現できていて、感心しました。
主演のカチャ・凪七 瑠海さんは、今回は本当に大変な新人公演でしたね。
まず、持ち味が全然違う役です。もうどうしようもないレベルで、合わない役。
せっかくの、明るく華やか爽やかな、少年めいた透明な持ち味が、マイナスにしか働かない役。誰もが百回くらい思った事だと思いますが、タニちゃんの役で新公主演ができれば良かったのにと、改めて思いました。
とはいえ、宝塚では役者の持ち味に合わない役を、ポジションとしてこなさなければならない事はたくさんあります。オオゾラさんに、ナイスリーというコメディ役がまわってきた悲劇もありましたし^^;
みっちゃん程になんでも達者にこなす人が、「薔薇の封印」新公主演で、耽美なヴァンパイヤ役が、びみょーになってしまった事もありました。
新公は、そんな持ち味に反する役を「なんとかする」事を学ぶ場でもあります。
でも今回は、カチャなりのリック像というのが、ちょっと曖昧だった気がしますね。本役のオオゾラさんとは、違うイメージを持って役作りをしているのはわかるのですが。
やはり真っ直ぐな人なので、無理にリックの屈折を演じようとして、考え過ぎちゃったような印象でした。
しかし、台詞をとばした後からの演技は集中力も素晴らしく、カチャなりのリックとして爽やかな終幕となりました。ラストをキチンと終われたので、終演後の印象は良かったです。この経験を、ぜひ大きなプラスに転じて欲しいと願います。
感心したのはオオゾラさんのリックの仕草を、かなり完璧に再現した事。その再現度の高さは、多分祐飛ファンのほうがわかると思います。すごく頑張って、オオゾラさんの仕草を見てくれんだな。歩き方、立ち方、座り方、タバコやスーツの扱いをはじめ、手の動き、肩の動き…本当に細かく観察して、自分のものとした努力に感心しました。
オオゾラさんが、長い年月をかけて積み上げ、磨き抜いてきた、”男役”の身体表現としてのかっこいい仕草を、しっかり見てくれ事は嬉しかったです。先日も書きましたが、あのオオゾラさんの立ち方を含めた男役芸は、おそらく久世さんをはじめマミさんやリカさんなどの偉大な先輩方のエッセンスを取り入れて、オオゾラさんなりに表現しているもの。それをカチャなりのカタチ咀嚼して、また次の世代にまで、伝えて下さるといいなー。
そしてもう一つ面白かったのが、カチャのリックは本役と違って”動き”を感情表現のメインとはしなかった事。
同じような動きを、違う心の動きで見る事で、逆に本役の表現がくっきり見えました。大空リックは、全ての体の動きが感情表現だと、改めて思いましたね。無駄な動きは一つも無いんだ。
目線の動き、肩や手の僅かな動き、動きの緩急などが、リックの心が動く時を表現している。それがちょうど、観客の心がリックの心の動きを理解する、ぴったりの間、なんですよね。オオゾラさんが深く考えて作り上げた、仕草を積上げてつくる芝居に、改めて気付かされた新公でした。
イルザの藤咲えりちゃん、素敵でしたー。
大劇場の時より、髪型もふんわりと華やかで、美しくなっていましたね。儚げで美しく品があり、しっとりした雰囲気もあり、でも意外な気の強さも持っていて。
とても細やかな表現で、イルザの揺れる心を見せてくれました。パリの場面全カットという、バーグマンよりも難しい役になってましたけれど、違和感を感じさせなかったのは、すごい。敬意を持ってラズロを愛しているのは確かだけれど、リックとの恋を捨てきれない、抑えられない情熱を感じました。
とてもしっかりした、知的な美人さんの雰囲気があるので、逆に、情熱の強さが際立つ感じ。芝居の傾向としては、やはり映画版に近い気がしました。
というよりも、本役とあまりにも違い過ぎて面白かったです。改めて、すみ花ちゃんって、本当に天才なんだなーと、思い知らされました。色々な事をぶっ飛ばして、イルザとして舞台に存在しているんだな、と。
えりちゃんのイルザは、宝塚の娘役の枠の中で、きっちりと「カサブランカ」のイルザを作り上げた感じ。かなり完成度の高いイルザだったと思います。宝塚のヒロインとして、観客の心を引っ張って舞台を作る力は十分感じられたので、今後、どういう芝居を見せてくれるのかとても楽しみです♪
英雄ヴィクター・ラズロ役の七海 ひろきさん、かっこいいの一言。
私の中では今回の新公で一番の大ヒット!でした。
実直とさえ言えるような誠実さと、あたたかさを持ちながら、ピリッとした鋭い雰囲気のラズロ。
本役のらんとむさんのあくまでも抑えた演技とは違い、強さとカリスマ性を前に出したイメージは、映画版のラズロに近いような気もしました。
でも映画も本役さんも、イルザをめぐるリックとの会話では、表情は勿論、目の色にさえ感情を見せませんが、カイちゃんラズロは違いました。
特に、カフェでの出会いの場面。ただならぬ様子のリックとイルザの会話の一言一言に、表情は変えないけれど、目の奥に浮かぶ感情の色が揺れ動くのを感じるのです。思わず、見とれてしまいました。なんて、ストレートな人なんだろう。
イルザに対する愛が溢れるようで、豊かな心を持った優しいラズロでした。反ナチス指導者の強い存在感と、愛に揺れる、優しすぎる男の二面性をとても魅力的に見せてくれたと思います。
カイちゃんは、最近の私の大注目の人だったのですが、期待以上の芝居でした。「逆転裁判2」のローランド君で見せた黒い部分を、うまく強さに変換でいたのがヒットだったのかな。
優しくて誠実で、愛に溢れた人でありながら、影も毒も併せ持っているという、非常に面白い個性。その”毒”が、宝塚の男役としては、非常に強力な武器です。いつも、フィナーレで、カイちゃんの毒が垣間見れるのを楽しみにしているのです。ぜひ更に磨いて、もっともっとカッコいい男役に欲しいですね。
さて、時間切れなので、続きはまた今度…。
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